研究領域 | 動く細胞と場のクロストークによる秩序の生成 |
研究課題/領域番号 |
22111007
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
林 茂生 独立行政法人理化学研究所, 形態形成シグナル研究グループ, グループディレクター (60183092)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | Drosophila / 陥入 / 上皮 / 気管 / 細胞分裂 / 形態形成 / 定量生物学 / 細胞運動 |
研究実績の概要 |
シート状の組織が立体化する過程における組織の構造的安定性と不安定性を司る細胞メカニズムを追求した.ショウジョウバエの気管形成における上皮の陥入過程をライブセルイメージングを用いて詳細に検討した.上皮細胞シートがゆっくりとへこんでいく間は上皮細胞の細胞分裂は停止していたが、予定陥入点で細胞が分裂期に進入し、球形化が開始すると同時に陥入が加速し、組織が一気に体内に落ち込むことが判明した.この観察結果は、細胞分裂の位置とタイミングが上皮細胞シートの陥入に密接に関連することを示唆するが、先行研究では、細胞分裂の起きない条件下でも陥入が起きることから、細胞分裂は陥入には必要ないと考えられていた。この定説を検証するために、細胞分裂不全の変異体を定量的に解析すると有為なタイミングに遅れが見いだされた.このことから、細胞分裂が陥入の加速に関与することが明らかになり、細胞分裂は陥入を阻害せず、むしろ積極的に貢献するという定説を覆す結果となった.更に陥入に関わるEGFとFGFのシグナル伝達系の貢献を調べると、通常は細胞分裂とEGFシグナルが共同して陥入を促進するが,両者に異常が生じて陥入が不全になった際にはFGFシグナルの作用で救済される事が判明した.更に微小管阻害剤の実験により陥入に貢献するのは細胞の分裂自体ではなく,分裂に先立つ細胞球形化が大事である事が判明した.異常の結果より細胞球形化とEGFとFGFのシグナルは安定した上皮に不安定要素を導入し,物理的な座屈を起こす事で形態形成の引き金を引く事が判明した.分裂期進入に伴う細胞の球形化が形態形成を積極的に推進するという知見は、発生において細胞分裂が果たす新しい役割の発見といえる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
組織の形態形成を座屈と言う物理学的概念で説明を与えた事は発生プロセスの一般的理解を助ける面で貢献度があると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
陥入に関わる他に遺伝子要因を探索して更に理解を深めると共に数理モデル化により仮説を検証する.
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