研究領域 | 動く細胞と場のクロストークによる秩序の生成 |
研究課題/領域番号 |
22111007
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
林 茂生 独立行政法人理化学研究所, 発生・再生科学総合研究センター, グループディレクター (60183092)
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研究期間 (年度) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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キーワード | Drosophila / 陥入 / 上皮 / 気管 / 細胞分裂 / 形態形成 / 定量生物学 / 細胞運動 |
研究概要 |
昨年度は生体内での管状組織の長さが調節されるしくみについてショウジョウバエの胚の気管系をモデルに研究した。生物の体内では、血管、呼吸管など管状組織のネットワークが縦横に張り巡らされ、血液や空気などの物質循環が行われる。物質がスムーズに循環するためには、部位ごとに管の太さが均一にそろっている必要がある。成長期のヒトの血管系では拍動の物理的な刺激に応じて血管内の細胞の再配置・増殖が起こり、血流が最適化されるように管の形状が変化するが、胚発生においては血液循環が始まる前にすでに血管はある程度適正な形状を獲得している。これまで、この循環に非依存的な管構造の適正化の仕組みはよく分かっていなかった。過去の研究から、ショウジョウバエ胚の気管の内側(管腔)にはタンパク質とキチン質を主成分とした細胞外マトリクスが蓄積し、気管の太さと長さという2つの形状特性を制御していることが知られていた。しかし、長さの制御において、細胞外マトリクスの果たす役割の詳細については未解明のままだった。 我々は、気管に蓄積する細胞外マトリクスの性状を詳細に解析したところ、粘り気がある液体成分と弾性体成分で構成されていることを見いだした。これらの成分を損なう条件や、気管上皮細胞の管腔側の細胞膜(アピカル細胞膜)が過剰に拡大するショウジョウバエの変異体を解析し、物理モデルで検証した。その結果、気管上皮細胞のアピカル細胞膜の拡張力と細胞外マトリクスの弾性力が拮抗することで力学的に安定し、適正な長さの気管ができることを見いだしました。 本成果は、細胞外マトリクスの形態形成に関わる新たな機能の発見であり、細胞が生物の管状組織を形作る細胞生物学的見地からも興味深いといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
組織の形態形成を座屈と言う物理学的概念で説明を与えた事は発生プロセスの一般的理解を助ける面で貢献度があると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
陥入に関わる他に遺伝子要因を探索して更に理解を深めると共に数理モデル化により仮説を検証する.
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