研究領域 | がん微小環境ネットワークの統合的研究 |
研究課題/領域番号 |
22112002
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮園 浩平 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90209908)
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研究分担者 |
田畑 泰彦 京都大学, 再生医科学研究所, 教授 (50211371)
城 潤一郎 独立行政法人放射線医学総合研究所, その他部局等, 研究員 (60511243)
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キーワード | がん微小環境 / シグナル伝達 / 生体材料 / 生体イメージング / ゲノム科学 |
研究概要 |
1) TGF-βによって誘導されるEMTの制御:TGF-β-SmadシグナルはEMTを制御する。我々は血管内皮細胞の間葉系細胞への分化を引き起こすEndMTがTGF-βシグナルによって制御されること、α-SMA陽性細胞の分化にはRhoシグナルとMRTF-Aの作用が重要であることを明らかにした。また、TGF-βは転写因子δEF1やSIP1を誘導し、alternative splicingを制御するタンパク質ESRPの発現を減少させる結果、FGF受容体のスプライシングパターンに変化が起こり、FGFへの応答性が変わることを示し、さらにESRPの発現は乳がんのタイプと関連することを明らかにした。 2) CAFの誘導とその働きに関する研究:EMTによって誘導された線維芽細胞は形態的にはTGF-βと共存するシグナルによってさまざまである。我々は前立腺がんとCAFの相互作用に注目し、BMPがヘッジホッグシグナルを介して骨形成性転移を起こす可能性について明らかにした。 3) 血管・リンパ管新生の制御に関する研究:我々はBMP-9が血管内皮細胞の増殖を促進し、腫瘍血管新生に密接に関わることを明らかにした。また、ChiPシーケンシング法によりBMPの血管内皮細胞における結合プロフィールを検索し、血管平滑筋細胞と比較した。その結果これまで知られていたSmad結合配列(SBE)に加えて、新たなSmad結合配列(GC-rich SBE)を同定した。さらに血管内皮細胞ではBMPがJAG1などのNotchシグナル関連遺伝子の発現を調節することを明らかにした。 4) 人工がん微小環境の創成:生体吸収性ハイドロゲルを利用することで、細胞増殖因子や細胞分化因子などの複数の因子を徐放化することができた。また、徐放化によりそれらの因子のin vivoでの生物活性の相乗効果が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は複数のBMPファミリー因子の解析の過程で、がん微小環境におけるリンパ管新生におけるBMP-9の新たな役割が明らかとなった。研究予想外の発展が見られたためこれを完結するために研究費の繰越申請を行った。計画したすべての研究がきわめて順調に進展しており、Nucleic Acids ResearchやOncogeneなどに15編の論文を発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究は次世代シーケンサー技術の導入により加速度的に進展しており、新たな成果が得られている。当初は予想しなかった結果が得られているが、分子から個体レベルまで実験は順調に進んでおり、現時点で研究面での大きな障壁は見られない。
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