研究領域 | がん微小環境ネットワークの統合的研究 |
研究課題/領域番号 |
22112002
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮園 浩平 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90209908)
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研究分担者 |
田畑 泰彦 京都大学, 再生医科学研究所, 教授 (50211371)
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研究期間 (年度) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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キーワード | がん微小環境 / シグナル伝達 / 生体材料 / 生体イメージング / ゲノム科学 |
研究概要 |
1) TGF-βによって誘導されるEMTの制御:肺がんに関連した転写因子TTF-1がTGF-βによるEMTを抑制する分子機構について、特にSmadとの相互作用を中心に検討した。TTF-1はSmad3とSmad4の複合体形成を抑制し、TTF-1がSmad4に代わってSmad3と結合することを明らかにした。ChIPシーケンシング法を駆使してTTF-1やSmad3の標的遺伝子を解析し、Smad3/Smad4複合体、Smad3/TTF-1複合体の新たな標的遺伝子を見出した。 2) CAFの誘導とその働きに関する研究:TGF-βとFGFで刺激した線維芽細胞はTGF-β単独で刺激した場合と比較してαSMAを発現せず、MMP9を産生しがん細胞の浸潤を促進する「活性型線維芽細胞」となる。我々は活性型線維芽細胞で発現する遺伝子の解析を行った。さらにTGF-βとFGFで刺激してEndMTを起こした血管内皮細胞についても検討を行い、αSMAを発現しないが、活性型線維芽細胞とは大きく異なったパターンの遺伝子表現型を示すことを明らかにした。 3) 血管・リンパ管新生の制御に関する研究:ALK1やPDGF受容体可溶性細胞外ドメイン(ALK1-FcとPDGFRβFc)を作成し、血管・リンパ管新生に対する作用を検討した。PDGFRβFcはリンパ管内皮の増殖を抑制することが明らかとなった。 4) BMPのがん微小環境に対する作用の研究:BMP-9とその受容体ALK-1は転写因子Prox1の発現を抑制することで血管内皮とは逆にリンパ管内皮の増殖を抑制することを見出し、in vitroとin vivoの両面から解析して成果を取りまとめた。 5) 人工がん微小環境の創成:平成23年度までに得られた成果をもとにサイトカインを内包したバイオマテリアルを作成し、BMP-4による胃がん細胞の増殖をin vivoで抑制することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はEMTを誘導する分子メカニズムの解析のために、ChIPシーケンシング法を駆使して新たな標的遺伝子を同定するなど、興味深い成果が得られた。研究の過程で予想外の発展が見られたためこれを完結するために研究費の繰越申請を行い平成25年9月までに成果を取りまとめた。計画したすべての研究がきわめて順調に進展しており、Nucleic Acids ResearchやOncogeneでなどに10編の論文を発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究は次世代シーケンサー技術の導入により加速度的に進展しており、新たな成果が得られている。これまでの発現解析だけでは予想もできなかった結果が得られているだけでなく、TGF-βシグナルに関する新たな知見も得られつつある。当初は予想しなかった結果が得られているが、分子から個体レベルまで実験は順調に進んでおり、現時点で研究面での大きな障壁は見られない。
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