計画研究
1) TGF-βによって誘導されるEMTの制御:肺腺がんの悪性度に関わる転写因子TTF-1のTGF-βシグナルに与える影響を調べ、Smad4を介しない、TTF-1/Smad3複合体の標的遺伝子としてLMO3を同定した。TTF-1とTGF-βの共同による新規のシグナル経路が明らかとなった。2)CAFの誘導とその働きに関する研究:TGF-βとFGFの共同作用で誘導される線維芽細胞は独自の活性化した形質を獲得する。活性化線維芽細胞はIntegrin α3などを特徴的に発現することが明らかとなった。一方、血管内皮細胞もTGF-βによって間葉系細胞に分化するが(EndMT)、EndMTの過程ではFGFは抑制的に作用することが明らかとなった。3)血管・リンパ管新生の制御に関する研究:BMP-9に加えてPDGFがリンパ管新生に重要な役割を果たすことが明らかとなった。In vitroだけでなく、in vivoでもPDGFRβFcや低分子化合物がリンパ管新生を抑制することを確認した。4)BMPのがんとがん微小環境に関する研究:本年度の研究の過程でBMP-4が大腸がんの細胞で特異的に高発現していることが明らかとなった。他のBMPの発現は変化なく、BMP-4のみに特異的な現象と考えられた。BMP-4は大腸がん細胞のアポトーシスを抑制することからBMP-4の作用の制御ががんの進展に重要な役割を果たすことが明らかとなった。5)人工がん微小環境の創成:体内に近い状態で細胞の生物機能を維持させる細胞集合体の培養技術を創製した。集合体内部にゼラチンハイドロゲル微粒子を均一に組み入れ、細胞への栄養、酸素の供給を効率化させた。その結果、細胞生存率と骨芽細胞分化が有意に増加した。ゼラチンハイドロゲル粒子からBMPを徐放することで、より高い効率の骨分化が可能となった。
2: おおむね順調に進展している
TTF-1とTGF-βのクロストークで制御される標的遺伝子としてLMO3を同定し、全く新しいシグナル制御機構を発見した。研究はおおむね順調に進行し、本研究の成果としてPNASなどに9編の論文を発表した。またBMP-4の大腸がんにおける重要な役割を見出したため、研究費の繰り越し申請を行い、平成26年9月までに成果をとりまとめた。
ゲノム解析手法の導入により研究は極めて順調に進行している。データベースの解析により、これまで予想しなかった新たな発見も見られ興味深い成果が得られつつある。現時点で研究面での大きな障壁は見られない。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件、 オープンアクセス 6件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (12件) (うち招待講演 7件) 備考 (2件)
Biochemical Journal
巻: 452 ページ: 345-357
10.1042/BJ20121200
Leukemia
巻: 27 ページ: 2107-2111
10.1038/leu.2013.121
PLoS One
巻: 13 ページ: e62659
10.1371/journal.pone.0062659
Journal of Biological Chemistry
巻: 288 ページ: 18911-18922
10.1074/jbc.M113.480996
Pathology International
巻: 63 ページ: 287-296
10.1111/pin.12067
Cancer Science
巻: 104 ページ: 1189-1197
10.1111/cas.12220
Proceedings of the National Academy of Sciences of U S A.
巻: 110 ページ: 18940-18945
10.1073/pnas.1310479110
Journal of Bone and Mineral Research
巻: 28 ページ: 1170-1179
10.1002/jbmr.1825
Journal of Tissue Engineering and Regenerative Medicine
巻: 7 ページ: 801-811
10.1002/term.1469
http://beta-lab.umin.ac.jp/
http://cancer-microenvironment.jp/