神経膠芽腫および大腸がんの幹細胞にRNAiライブラリーを導入し、がん幹細胞性、造腫瘍性に重要な遺伝子を検索すると同時にこれまでに同定した遺伝子について以下の研究を行った。 1)RNAiを用いた摂動実験により、これまでに同定された遺伝子の上下関係を検索し、関連したシグナル経路毎に分類した。これにより、新規分子の解析が容易となり、がん幹細胞の腫瘍形成能に重要なシグナル伝達経路の描出が容易となった。2)Notchシグナルの標的遺伝子をノックダウンして造腫瘍性に必須な遺伝子を同定した。3)Wntシグナルが造腫瘍性に重要であることを証明し、β-cateninがmicroRNAを標的としていることを明らかにした。さらに、血管内皮細胞をはじめとした微小環境細胞の分泌するWntの重要性を解析している。4)機能未知の1回膜貫通型蛋白質EN-9、EN-10(仮称)の細胞内ドメイン結合蛋白質を同定し、さらに下流のシグナル経路の同定を進めている。5)7回膜貫通型蛋白質Lgr5の上流で機能する転写因子、miRNAを同定し、Lgr5が大腸がんで過剰発現している分子機構の一端を明らかにした。さらにリガンドの同定、下流シグナル経路の同定を進めている。6)APCにより活性化されるGEF分子Asefの大腸癌での過剰発現にはNotch3が重要な役割を果たしていることを明らかにした。Notch3を供給する細胞の同定を進めている。7)膜蛋白質EN-9、EN-10のモノクローナル抗体の作製を進めた。
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