研究領域 | がん微小環境ネットワークの統合的研究 |
研究課題/領域番号 |
22112005
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高倉 伸幸 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (80291954)
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キーワード | 癌 / がん幹細胞 / 血管 / ストロマ細胞 |
研究概要 |
腫瘍形成早期に腫瘍周囲に集積する造血幹細胞は、悪性度の低いがん細胞との細胞間相互作用により、がん細胞をがん幹細胞化させうることを発見した。そこで、この細胞融合様変化により幹細胞化したがん細胞で発現が極めて増減している3種類の遺伝子を候補として同定した。そのうちの一つの遺伝子ROPAFに注目して解析を行ったところ、血管内皮細胞やマクロファージといった腫瘍環境においていわゆるストロマ細胞となりうる細胞と、がん細胞において共通して発現していることが判明した。そこでこの生理的結合因子を用いて細胞増殖に関して解析を行ったところ、受容体の活性化による細胞増殖活性は限定的であることが判明した。しかし、この受容体の発現が高いがん細胞では転移/浸潤活性が高く、がんの悪性化と関連すると考えられた。がん幹細胞のニッチ形成に関与すると考えられる血管周囲のストロマ細胞としてPDGFRβ陽性細胞を単離し、株化した間葉系細胞株を用いて、がん幹細胞性を維持させうる細胞株を選別した。これまで我々はDNA複製因子であるPSF1遺伝子のレポーター遺伝子を構築し、PSF1プロモーター活性の高いがん細胞ががん幹細胞となりうることを示してきた。そこで、このがん細胞をストロマ細胞の有無において培養したところ、ストロマ細胞の存在下で始めてPSF1プロモーター活性が維持されることが判明した。つまり、がん幹細胞性を維持できる解析系が樹立できたと考えられた。また、本年度CD44ノックアウトマウス由来のストロマ細胞の樹立に成功した。この細胞を用いれば、ストロマ細胞上のCD44の機能的意義が解析できると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腫瘍微小環境を構築する細胞によるがん細胞のがん幹細胞への悪性変化の誘導機構に関しては、注目すべき複数の遺伝子が単離され、計画通りその機能解析が遂行されてきている。また腫瘍ストロマ細胞によるがん幹細胞の幹細胞性維持機構もストロマ細胞の樹立とともに順調に解析が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度CD44ノックアウトマウスからの腫瘍ストロマ細胞の作製に時間を要したが、本年度その樹立が完成しストロマ細胞とがん幹細胞の細胞間相互作用において、CD44の機能的役割を解析する実験系が確立できた。ストロマ細胞上でがん幹細胞が幹細胞性を維持することのできる培養系は、その培養系からがん幹細胞の維持機構に関わる分子が解明できると考えられることから重要である。現在特に研究の遂行上問題となる点はない。
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