研究領域 | がん微小環境ネットワークの統合的研究 |
研究課題/領域番号 |
22112006
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐藤 靖史 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (50178779)
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キーワード | VASH1 / αチューブリン / 脱チロシン化 / 受容体の細胞内移動 / Human Protein Maicroarray / カルパイン |
研究概要 |
Vasohibin-1(VASH1)の血管新生抑制の作用機序について、これまでの研究から、VASH1は内皮細胞に作用してαチューブリンを脱チロシン化し、チューブリンの細胞運動に対する作用を阻害することで主に内皮細胞の遊走を抑制することを見出している。今年度は、この内皮細胞のαチューブリン脱チロシン化が、内皮細胞の細胞内蛋白輸送に対しても抑制的に機能し、VEGF受容体を含む細胞膜受容体の細胞内移動を停止させること、そのためリガンドは細胞膜の受容体に結合するものの受容体からの細胞内シグナル伝達がされてしまうという、これまでに前例のない、全く新しい機序によって血管新生を抑制することを見出した。 VASH1の細胞膜受容体を探索する一環として、VASH1が結合する蛋白をHuman Protein Maicroarraysを用いて網羅的にスクリーニングし、VASH1の新規結合蛋白を10個以上同定することができた。 VASH1は、分子量42kDaのサイズで内皮細胞より分泌されるが、癌細胞が共存すると、N末端が切断された未だ活性を持つ36kDa型、C末端が切断され活性を失った27kDa型への分解・不活性化が促進される。この癌細胞によるVASH1の分解・不活性化に関わる蛋白分解酵素について研究を進め、システインプロテアーゼのうち、特にカルパイン-1および-2の特異的阻害剤によって27kDa型へ分解・不活性化が完全に抑制できることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
VASH1の作用メカニズムとして、αチューブリンの脱チロシン化により受容体の細胞内への移動が停止し受容体からの細胞内シグナル伝達がされてしまうという、全く新しい機序を見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
Human Protein Maicroarraysを用いた網羅的スクリーニングから同定した、10個以上の新規VASH1結合蛋白の中から、αチューブリンの脱チロシン化を指標に、内皮細胞に血管新生抑制シグナルを伝える受容体を選出する。
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