研究領域 | がん微小環境ネットワークの統合的研究 |
研究課題/領域番号 |
22112006
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐藤 靖史 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (50178779)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | VASH1 / 血管内皮細胞 / αチューブリン脱チロシン化 / 受容体internalization / SOD2 / SIRT1 |
研究実績の概要 |
VASH1はVEGFをはじめとして様々な血管新生の刺激に対して広いスペクトルムで血管新生を抑制し、腫瘍血管を成熟した正常血管構造に変換することを明らかにした。また、その広いスペクトルムでの血管新生抑制のメカニズムとして内皮細胞のαチューブリンを脱チロシン化する作用が重要であり、これによってVEGF受容体を初めとする増殖因子受容体のinternalizationが停止することで、リガンド結合によって受容体はリン酸化されるものの細胞内への刺激伝達が阻止されるという、前例の無い極めてユニークはメカニズムを見出した。また、VASH1はVEGFシグナルを遮断するにもかかわらず内皮細胞の障害は惹起せず、SOD2やSIRT1の発現誘導を介して内皮細胞の生存とストレス耐性を高める作用のあることを見出した。このようにVASH1は血管新生を阻止するばかりか、新生された血管を正常・安定化する作用があり、VEGFシグナル遮断に基づく内皮細胞の障害を予防する可能性を提示した。 さらに、公開されている成績のデータマイニングから、VASH1発現が低い乳癌患者の方が予後不良である事を確認し、内皮細胞におけるVASH1の発現を制御する機序として、特定のmicroRNAが関わっている可能性を示す成績を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最近、VEGFをはじめとした増殖因子のシグナル伝達において、リガンドが結合した受容体のinternalizationの重要性が指摘されている。VASH1は様々な血管新生刺激に対して広いスペクトルムで血管新生を抑制し、しかも内皮細胞を障害せず、腫瘍血管を成熟した正常血管構造に変換することを明らかにし、さらに、広いスペクトルムの血管新生を抑制する作用機序として内皮細胞のチューブリンを脱チロシン化する作用が重要で、これによってVEGF受容体などのinternalizationが停止することで、リガンド結合によって受容体はリン酸化されるものの、細胞内への刺激伝達は阻害されるという極めてユニークは機序を見出した。このような機序で作用する内因性因子としてはVASH1が初めてのものである。
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今後の研究の推進方策 |
VASH1が内皮細胞のαチューブリンを脱チロシン化がVEGF受容体のinternalizationを阻害して細胞内シグナル伝達を阻止する事象に関して、VEGF受容体の局在を細胞レベルで明らかにし、さらにRabファミリー低分子量G蛋白との関連性を調べる。さらに、VASH受容体の単離・同定を目指しは、Protein-Protein Interaction ProfilingからVASH1蛋白と結合する蛋白のスクリーニングし、得られたVASH1と結合する蛋白の内で膜蛋白に注目し、VASH1が内皮細胞のαチューブリンを脱チロシン化する活性をリードアウトとして、ノックダウンしたときにαチューブリンの脱チロシン化が消失するものを選出する。
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