計画研究
腫瘍内微小環境の複雑なシグナルネットワークを解析する上で、HIFとNF-κBやTGF-βの相互作用は、重要な知見をもたらすと考えられる。これらの活性をin vivoでモニターするために、基質の異なるルシフェラーゼ発光酵素遺伝子のプロモーター領域に、HIF-1,NF-κB、Smad4結合領域を組み込んで、それぞれの活性をモニターできるルシフェラーゼレポーター遺伝子を構築した。更に、これらのルシフェラーゼレポーター遺伝子をゲノムに組み込み、安定にルシフェラーゼレポーター遺伝子を保持する腫瘍細胞を構築した。同一腫瘍内での腫瘍形成過程におけるこれら因子の活性変化を、生体発光イメージングで非侵襲的にモニターすることを目指して、免疫不全マウスに移植したが、いずれのがん細胞も定着して腫瘍を形成するに至らなかった。培養細胞系において、低酸素刺激やTNF-α,TGF-β添加によりそれぞれ、HIF,NF-κBやTGF-β活性の変化を経時的にモニタリングすることで、これらの因子間のクロストークを観察した。今後、移植腫瘍モデルにおけるこれらの活性と悪性化の関連を明らかにし、微小環境内シグナルネットワーク解析を試みるとともに、これらの因子の活性変化に相関して変化する因子の検索を行う。その因子の活性に応答するセンサー型のドラッグをデザインすることで、目的である『環境標的薬』開発を進める。また、上記評価系を用いて昨年度のスクリーニングで候補としてあがってきた複数の腫瘍内微小環境特異的因子の応答を上記評価系で検証し、センサー型のドラッグをデザインするための候補因子の絞り込みを行う。
2: おおむね順調に進展している
予定通り、HIF-1,NF-κB、Smad4結合領域を組み込んで、それぞれの活性をモニターできるルシフェラーゼレポーター遺伝子を構築した。更に、これらのルシフェラーゼレポーター遺伝子をゲノムに組み込み、安定にルシフェラーゼレポーター遺伝子を保持する腫瘍細胞を構築した。しかし、がん細胞移植後の細胞の増殖が観察されず、腫瘍内でのクロストーク解析に至っていない。しかし、培養細胞系でのクロストークは十分に観察されているため、今後、これらの細胞を用いたマウスがんモデルの構築を進めることで、目的の系を完成させる。
今後、マウスがんモデル系を構築し、HIF-1、NF-κB、Smad4間のクロストークおよび増殖因子等の関与を観察することで、がんの悪性化に関わる腫瘍内の変化を観察し、がんの悪性化における顕著なマーカーとなり得る変化を同定する。その上で、変化に深く関わる因子を同定するために、遺伝子発現変化を網羅的に解析する。候補となる因子を解析し、悪性化のマーカーや治療標的になる因子を同定する。がんのモデルマウスの構築が現在最も重要な課題となっており、良いモデルができるか否かで研究の今後の方向性や展開が大きく左右されるため、本年度はモデル構築に全力を上げて取り組みたい。
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