計画研究
1.Rac1活性の揺らぎの意義: がん細胞の多様性はゲノムあるいはエピゲノムの変化以外に、細胞内情報伝達系の確率的揺らぎにおいてももたらされる。蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の原理に基づくRac1バイオセンサーを使って、悪性神経膠芽腫の浸潤能の多様性がRac1活性のゆらぎによってもたらされることを示した。まず、Rac1のFRETバイオセンサーをラットC6グリオーマ細胞に発現させ、Rac1活性を5日間にわたり観察した。その結果、Rac1活性が細胞周期よりももっと長い周期でゆるやかに揺らいでいることを見出した。ついで、その意義を調べるために、Rac1活性に応じて細胞を分取し、Rac1活性の高い細胞分画(Rac1(hi))と、Rac1活性の低い細胞分画(Rac1(lo))を得た。マトリゲル浸潤アッセーの結果、Rac1(hi)はRac1(lo)よりも強い細胞浸潤能を有していることを見出した。さらに、それぞれの分画からmRNAを取り出して解析した結果、Rac1(hi)はEgr2遺伝子に支配される遺伝子が発現しており、これらの遺伝子が腫瘍の浸潤を促進していることを示唆する結果を得た。2.FRETバイオセンサーを使ったEGFR情報伝達系のネットワーク解析: Ras-ERK情報伝達系とPI3K-mTOR情報伝達系は様々ながんで活性化されている。そこで、FRETバイオセンサーを使ってその解析を行い、これらの系の間のフィードフォアワード制御およびフィードバック制御が抗がん剤に対する感受性を制御することを示した。
3: やや遅れている
平成25年9月、当初には予測できなかった研究実施場所の耐震改修により、2ヶ月間多光子顕微鏡の使用ができなかった。そのため、実験が順次2か月間繰り下げられた。。
耐震改修工事が終了後、すみやかに実験を再開し、平成25年度に予定していた研究は、平成26年夏までにおおむね終了した。今後は、培養細胞の長期間イメージング、FRETバイオセンサーを発現するトランスジェニックマウスのイメージングを進めるとともに、これらのモデリングとシミュレーションも推進する予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
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