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2013 年度 実績報告書

ズームイン(高精細)とズームアウト(広視野・深部)観察を可能にする革新技術の開発

計画研究

研究領域細胞機能と分子活性の多次元蛍光生体イメージング
研究課題/領域番号 22113003
研究機関独立行政法人理化学研究所

研究代表者

宮脇 敦史  独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, チームリーダー (80251445)

研究分担者 濱 裕  独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 専門職研究員 (30261796)
研究期間 (年度) 2010-06-23 – 2015-03-31
キーワードイメージング / 蛍光蛋白質 / 細胞周期 / FRET / レチノイン酸
研究概要

ニホンウナギの筋肉から緑色蛍光タンパク質をコードする遺伝子を単離した。その遺伝子産物「UnaG」は、クラゲやサンゴ由来の蛍光タンパク質とはまったく異なるしくみで光ることがわかった。UnaGにおいてはビリルビンが特異的に結合し蛍光性発色団として働くのである。ビリルビンは、赤血球に含まれる酸素運搬タンパク質ヘモグロビンの代謝中間産物である。血清中のビリルビンの量が異常に増えると組織に沈着し黄疸症状が表れる。血清ビリルビン濃度は、溶血や肝臓機能を評価する指標で、一般的な健康診断の生化学検査項目に含まれ、また新生児黄疸を診断するうえでも必須の測定値である。ところが、1916年にジアゾ化法が開発されて以来いくつかのビリルビン比色法が開発されているが、いずれも複雑、感度が低い、特異性が低い、時間がかかるなどの問題があった。一方、UnaGを利用する蛍光測定法は簡単迅速に測定ができ、従来の比色法に比べ3桁以上の高感度、2桁以上の高精度の定量法を達成することがわかった。
細胞周期プローブFucciを恒常的に発現するトランスジェニックマウスを用いた解析を行った。まず#474/610ラインの血球系細胞の細胞周期進行を詳細に調べたところ、G0期とG1期とが、Fucciの赤色蛍光の強度によって識別できることがわかった。特にリンパ球が休止期状態と活性化状態との間を往復する様子を観察することができた。また、#474/610ラインから調製した造血幹細胞画分及び胎盤形成細胞画分を、独自に開発した細胞培養皿に撒いて長期間タイムラプスイメージングを施行した結果、細胞分化とendoreplication(細胞質分裂をスキップして核DNA量が指数関数的に増大する現象)との連関を観察することができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

従来の蛍光タンパク質は、GFPやGFP-like proteinに代表されるように、タンパク質自身のペプチド部分を材料に発色団が形成されるものであった。我々が開発したUnaGは、ビリルビンをリガンドとして取り込んで蛍光性を獲得するタンパク質である。天然の色素をリガンドとして取り込む蛍光タンパク質はこれまでにもいくつか報告されているが、UnaGは様々な点で新奇のものと言える。ヘム代謝の中間産物のビリルビンを非共有結合的に取り込む特徴を利用して、蛍光性のビリルビンセンサーを開発することができた。臨床化学や小児科学の研究者や企業からの引き合いが多く、UnaGの医療分野での実用的な応用研究が始まっている。さらに、絶滅危惧種に近いニホンウナギにおけるUnaGの役割の探究など、非常に学際的な新学術領域研究に発展することが期待される。蛍光タンパク質の枠組みを大きく拡張しつつあるという観点で達成度は大きいと思われる。
Fucciのトランスジェニックマウスにおいて、赤蛍光は細胞分化を緑蛍光は細胞増殖を示すと言える。Fucciマウスを解析することにより、個体レベルで細胞周期の制御機構に関する情報を得ることができる。さらに、こうした研究に固定組織透明化技術Scaleを組み合わせることで、細胞の増殖と分化に関する大規模かつ高精細な3次元再構築モデルを作成することができるようになった。ズームインとズームアウトの両アプローチを提案する当研究領域の目標が達成されつつあると思われる。

今後の研究の推進方策

生体イメージングの未開拓部分を開拓していく方策である。たとえばヘム代謝産物としてのビリルビン。人類は血清中のビリルビンを測定してきたが、血管外組織におけるビリルビンの濃度についてはまったく知らない。UnaGの変異体を作製し、哺乳類動物のビリルビン動態をイメージングすることを狙う。黄疸の原因物質として悪玉とみなされてきたビリルビンであるが、最近では善玉(抗酸化物質)として注目されつつある。我々の体を健康にするメカニズムを解明する研究として発展させていきたい。
また、生体イメージングの多角化を図っていく方策である。細胞周期、レチノイン酸、ビタミンD,カルシウム、酸化ストレス、オートファジーなどの動態を同時に観察するための遺伝子改変動物、光学顕微鏡、解析ソフトの開発を行っていく。
さらに、生体イメージングの課題である「深部アクセス」を向上させる技術開発を行う。プローブの長波長シフトなどを精力的に進める。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2013

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 4件)

  • [雑誌論文] A Bilirubin-Inducible Fluorescent Protein from Eel Muscle.2013

    • 著者名/発表者名
      Kumagai A, Ando R, Miyatake H, Greimel P, Kobayashi T, Hirabayashi Y, Shimogori T, Miyawaki A.
    • 雑誌名

      Cell

      巻: 153 ページ: 1602-1611

    • DOI

      10.1016/j.cell.2013.05.038

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Contrasting Quiescent G0 Phase with Mitotic Cell Cycling in the Mouse Immune System.2013

    • 著者名/発表者名
      Tomura M, Sakaue-Sawano A, Mori Y, Takase-Utsugi M, Hata A, Ohtawa K, Kanagawa O, Miyawaki A.
    • 雑誌名

      Plos One

      巻: 8 ページ: e73801

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0073801

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Visualizing developmentally programmed endoreplication in mammals using ubiquitin oscillators2013

    • 著者名/発表者名
      Sakaue-Sawano A, Hoshida T, Yo M, Takahashi R, Ohtawa K, Arai T, Takahashi E, Noda S, Miyoshi H, Miyawaki A.
    • 雑誌名

      Development

      巻: 140 ページ: 4624-4632

    • DOI

      10.1242/dev.099226

    • 査読あり
  • [学会発表] The interplay between light and life2013

    • 著者名/発表者名
      宮脇敦史
    • 学会等名
      第1回最先端創薬科学シンポジウム 『蛍光と創薬』
    • 発表場所
      長崎大学
    • 年月日
      20130928-20130929
    • 招待講演
  • [学会発表] 新規蛍光プローブとバイオサイエンスの新展開2013

    • 著者名/発表者名
      宮脇敦史
    • 学会等名
      JASIS 2013英国王立化学会(RSC)東京国際コンファレンス
    • 発表場所
      幕張
    • 年月日
      20130906-20130906
    • 招待講演
  • [学会発表] Cruising inside X2013

    • 著者名/発表者名
      宮脇敦史
    • 学会等名
      26th International Conference on Photochemistry
    • 発表場所
      Leuven, Belgium
    • 年月日
      20130730-20130730
    • 招待講演
  • [学会発表] Cruising inside cells2013

    • 著者名/発表者名
      宮脇敦史
    • 学会等名
      第60回日本実験動物学会総会
    • 発表場所
      つくば
    • 年月日
      20130515-20130515
    • 招待講演

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公開日: 2015-05-28  

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