光学的な観察・測定法は「生きた」対象内部で(in vivo)、多種類の分子や細胞の動態を、同時かつ高時空間分解能で、計測することが可能である。2光子顕微鏡は、近赤外域のフェムト秒光パルスにより生じる非線形光学過程である2光子励起過程を利用する方法論であり、他の顕微鏡法では観察が困難な、生体組織深部の観察が可能である。現在、生物個体中で細胞や生体分子の非侵襲的な可視化解析が可能な方法論として、最も期待されている。本研究計画では、新規レーザーや補償光学系の導入により、現在のin vivo 2光子顕微鏡を発展させ、光による観察と操作を真の生体組織深部で実現するin vivo 2光子顕微鏡の完成を目指した。さらに、新規蛍光タンパク質や光機能性分子の導入より、生体脳の神経伝達、分泌現象をモデルとして、生体内の分子機構を理解する新規イメージング手法を確立することも目標とした。(1)新規2光子顕微鏡システムによる2光子励起光刺激法の検証 昨年度、近赤外超短光パルスレーザーを導入し、2光子励起イメージングと2光子励起光刺激を逐次的同時刺激を可能とするシステムの設計、統合化を図ることに成功した。また、in vivo生体脳観察のための麻酔システム、脳保定システム等を構築した。(2)収差補正のプロトコルの検討 安定な蛍光プローブをドープした様々な組成のファントムを用いて、屈折率等の光学パラメーターと、点分布関数や断層像のS/Nの変化を解析し、深部解像イメージングにおける収差補正に付いて知見を得た。(3)がん、神経伝達に普遍的な分泌・開口放出の分子基盤の解明のための蛍光可視化系の確立 申請者が共同研究を行った世界で最も短い蛍光波長を持つ蛍光タンパク質シリウスの蛍光強度はpH依存性が無いことを活用し、酸性環境下での蛍光イメージングに極めて有効である。昨年度は、酸性小胞を可視化する系の確立に成功した。
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