研究領域 | 細胞機能と分子活性の多次元蛍光生体イメージング |
研究課題/領域番号 |
22113005
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
根本 知己 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (50291084)
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研究分担者 |
川上 良介 北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (40508818)
日比 輝正 北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (50554292)
大友 康平 北海道大学, 電子科学研究所, 特任助教 (40547204)
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研究期間 (年度) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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キーワード | イメージング / 2光子顕微鏡 / 脳・神経科学 / がん / 蛍光 / 超短光パルスレーザー / 非線形光学 |
研究概要 |
(1)昨年度導入した光刺激と光イメージングの同時実行のためのダイクロイックミラーシステムに動作上の問題があることが判明したため、機械的な改良を実施した。その結果、本来のT:Sapphireレーザーの有する広帯域の波長に対して、今まで以上の組合わせで実験、観察を実施することが可能になった。 (2)深部イメージングに関しては、昨年度に引き続き、導入光学系や光学パラメータの最適化を行うと共に新たな新規レーザー光源の可能性を探索することを開始した。その潜在的な可能性が高いことが判明した。特に、多様な脳部位におけるin vivo深部イメージングへの応用が可能であることを確認することができた。さらに光学的なパラメータを解析するために、マウス生体脳深部へ、マーカーとして微小蛍光ビーズを安定して導入する方法論の開発に着手した。 (3)長期in vivoイメージングのための新規薬理物質溶液の開発や、反対側から交連線維を介して神経軸索を延ばす神経細胞のin vivoイメージングのためのマルチカラー染色法の開発にも着手した。 (4)PFA固定サンプルのための新規透徹剤の応用として高NA対物レンズとの併用可能性を検討した。その結果、H-lineマウス固定脳スライス標本において、深部到達性と空間分解能の改善を示唆する蛍光画像を取得することができた。その結果、海馬錐体細胞の樹状突起スパインの形態の多様性に関して新しい知見を得ることができた。この成果は日本生理学会おいてポスター発表され、「優秀ポスター賞」を受賞した。 (5)グルコース輸送体の細胞内分布やそのダイナミクスに関する可視化解析を進め、インスリン刺激前後での細胞内分布変化をライブイメージングで取得することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度、特注し納入された部品に問題点があることが判明したため、一時期、実際の生物を使用した実験を中断し新規部品の設計、特注を実施したもののの、その影響は予想よりは少なく、他の実験項目での著しい進捗が十分に補償した結果となった。このように本研究計画の中心である新規in vivo2光子顕微鏡システムの高度化に関しては、問題を乗り越え、現時点でほぼ完成している。また新規光源等の導入により、予想を超えた世界記録となるような研究成果も得ることができている。
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今後の研究の推進方策 |
本計画で予定していた光イメージングと光刺激を同時実行可能とする2光子顕微鏡システムは、当初予定していたスペックはほぼ実現できており、さらに予想にしていなかった生体脳深部の断層イメージングにも成功している。次年度はこのシステムのさらなる改善のみならず、十全に活用することで、神経細胞活動や分泌モデル、癌モデルなどへの適用を図っていく。 (1)in vivo 2光子顕微鏡システムの高度化: 昨年度導入の新規レーザー光源のパフォーマンスを最適化することによりさらなる深部解像を目指す。特に海馬CA1領域での深部到達限界の改善を図る。また多様な脳部位での深部イメージングの検討を実施する。また「ベクトルビーム」の光学的特性に由来する多様な性質を利用した生体深部の高解像イメージングを検討する。(2)脂肪細胞モデルにおいて小胞輸送、開口放出のライブイメージングを進める。(3)他研究計画班との共同研究により癌モデル動物における生体深部イメージングの可能性を検討する。また皮膚、新生ニューロンなどへの応用可能性も検討する。(4)小脳LTDモデルにおける神経回路活動のin vivo可視化解析を推進する。(5)これらの新規顕微鏡によって得れる4Dデータスタックなどの膨大な画像データの解析については、数理系の研究者の助言を仰ぐことで、効率的で定量的な方法論を開発推進することを目指していく。
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