平成22年度は、癌特異的なCD8陽性T細胞の細胞増殖状態の生体内イメージングを行うために、宮脇らのグループによって開発された細胞周期蛍光タンパク質プローブと、特定抗原特異的T細胞受容体をCD8陽性T細胞が発現するトランスジェニックマウスを作成した。このマウスからCD8陽性T細胞を単離・移植して、免疫応答中のCD8陽性T細胞の細胞周期を二光子イメージングで可視化することを試みた。細胞周期G1期のプローブと、S/G2/M期のプローブの二光子励起顕微鏡による同時可視化は、2台の超短パルスレーザーによって、約900nmと約1000nmの励起波長を同時に用いることにより効率的に達成されることが分かった。リンパ節内の癌細胞由来抗原を提示する樹状細胞や、移植腫瘍内の腫瘍細胞と、CD8陽性T細胞との動的相互作用および、CD8陽性T細胞の細胞周期の同時解析が可能になった。効率的なT細胞による癌の退縮が起こる免疫条件と、T細胞の活性化は効率的に起こすが、癌の退縮効果の弱い免疫条件において、癌特異的T細胞の細胞周期と細胞間相互作用がどのように異なっているかを解析している。樹状細胞サブセットを特異的にイメージングするレポーターマウスと組み合わせることにより、抗腫瘍効果の高い免疫条件において、どの樹状細胞サブセットと癌特異的T細胞が相互作用することで、活性化・増殖しているかをイメージングにより明らかにすることが可能となった。
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