研究領域 | 細胞機能と分子活性の多次元蛍光生体イメージング |
研究課題/領域番号 |
22113006
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
岡田 峰陽 独立行政法人理化学研究所, 免疫細胞動態研究ユニット, ユニットリーダー (50452272)
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キーワード | 免疫 / 癌 / 細胞傷害性T細胞 / イメージング |
研究概要 |
前年度に引き続き、細胞周期蛍光タンパク質プローブと特定抗原特異的T細胞受容体を発現する、CD8陽性T細胞を用いた解析を行った。その結果、CD8陽性T細胞による効率的な癌の退縮が起こる条件においては、これらのT細胞はエフェクターメモリー細胞に分化しリンパ節から移出した後、腫瘍組織内において最も活発に増殖していることが分かった。また樹状細胞サブセットを選択的に可視化する遺伝子改変マウスを用い、生きたマウスの腫瘍組織内のイメージングを行ったところ、腫瘍組織内に浸潤した抗原特異的エフェクターメモリーT細胞は、腫瘍内で増殖を再開する直前に、腫瘍内の辺縁部に存在する樹状細胞サブセットに、抗原特異的な接合を行うことが見いだされた。そのため、エフェクターメモリーT細胞と腫瘍組織の樹状細胞の、相互作用の意義を調べるための実験系の構築を開始した。イメージング技術向上の点においては、本年度はオプティカルパラメトリックオシレーターを用いたチタン・サファイアレーザーの波長変換を導入し、橙色または赤色蛍光タンパク質の長波長2光子励起能が向上したため、免疫組織・腫瘍組織のイメージングの多色性を向上することが出来た。また、本年度は液性免疫応答を担うヘルパーT細胞のサブセットのイメージングプロジェクトも開始した。その結果、スフィンゴシン1リン酸の受容体の一つが、これらのヘルパーT細胞サブセットが液性免疫反応場に留まるために、重要な役割を果たしていることが示唆された。この結果は、抗腫瘍抗体作製などにおいても重要な、液性免疫応答の促進メカニズムの解明につながるものと期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イメージング技術は、手技的にも光学系のうえでも年々改善されており、新しいレポーターマウスの使用も相まって、これまでに適切に調べられていない、腫瘍免疫応答おける重要な現象が可視化され始めているため。
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今後の研究の推進方策 |
エフェクターメモリーT細胞と腫瘍組織の樹状細胞の、相互作用の意義を調べるための実験系の構築し解析する。光変換型蛍光タンパク質を発現するマウスを用いることにより、腫瘍特異的T細胞との活性化・分化に重要な相互作用を行う樹状細胞サブセットのさらなる詳細な特定を行う。ヘルパーT細胞におけるスフィンゴシン1リン酸受容体発現制御の免疫応答への影響を調べることにより、長期液性免疫応答を制御法開発の可能性を探る。
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