研究領域 | 細胞機能と分子活性の多次元蛍光生体イメージング |
研究課題/領域番号 |
22113006
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
岡田 峰陽 独立行政法人理化学研究所, 統合生命医科学研究センター, チームリーダー (50452272)
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研究期間 (年度) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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キーワード | 免疫 / 癌 / 細胞障害性T細胞 / イメージング |
研究概要 |
前年度までの研究により、転写因子(仮称Lztx)が細胞障害性T細胞(CTL)のメモリー細胞形成に非常に重要な役割を果たしていることが示唆されていた。今年度は、CD8陽性T細胞が活性化しCTLが誘導される際の、Lztxの発現ダイナミクスと、そのCTL形成における役割を調べた。その結果、CD8陽性T細胞は活性化したのち急速にLztxの発現を低下させ、その後エフェクター細胞になるものではLztxの発現を低下させたままでいるのに対し、メモリー細胞になるものは徐々にLztxの発現を回復していくことが分かった。この活性化後に急速に起こるLztxの発現低下の意義を調べるために、LztxトランスジェニックCD8陽性T細胞を作成して解析したところ、Lztx発現低下が十分に起こらないCD8陽性T細胞では、細胞分裂が十分に起こらず、またCTL形成が阻害されていた。このことはCTLによる腫瘍退縮作用を調べた実験でも確認された。一方、Lztx遺伝子欠損T細胞を用いた実験から、一旦低下したLztx発現がその後回復していかなければ、形成されたCTLの細胞死が亢進して、その結果メモリー細胞形成が出来ないことが示唆された。 また、一昨年度から開始していた、液性免疫応答を担うヘルパーT細胞のサブセットに関する研究では、イメージング実験からスフィンゴシン1リン酸の受容体の一つ(S1PR2)が、これらのヘルパーT細胞サブセットが液性免疫反応場に留まるために、重要な役割を果たしていることが示唆されていた。今年度の実験から、S1PR2はケモカイン受容体CXCR5と協調的に働き、これら両方の受容体を欠損したヘルパーT細胞では、長期液性免疫応答を促進することが出来ないことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
LztxのCTL形成における機能解析の面ではおおむね順調に進んでいる。一方でLztx欠損CTLのイメージングのためのマウスの交配の効率が予定よりも悪く、イメージング実験計画に影響が出ている。
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今後の研究の推進方策 |
Lztx欠損CTLのイメージングのためのマウスの交配・作成を引き続き進め、これを用いたイメージング実験を最終年度に完遂する。
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