研究領域 | 細胞機能と分子活性の多次元蛍光生体イメージング |
研究課題/領域番号 |
22113009
|
研究機関 | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
福原 茂朋 独立行政法人国立循環器病研究センター, 細胞生物学部, 室長 (70332880)
|
キーワード | シグナル伝達 / 血管新生 / バイオイメージング / 細胞形態・運動 / 細胞増殖 |
研究概要 |
血管形成には、"細胞形態・運動"と"細胞増殖"という二つの「細胞の振る舞い」が重要である。本研究では、多次元生体蛍光イメージング技術を駆使して、生体における血管内皮細胞の"形態・運動"と"増殖"を観察し、さらにこれら細胞の振る舞いを制御するシグナル伝達系を可視化することで、血管形成のダイナミズムを解き明かすことを目的としている。以下に、平成23年度の研究成果を示す。 血管新生過程の内皮細胞の形態・運動能を制御するシグナル伝達系の解析 伸長する血管の先端に位置するTip細胞は、血管新生因子に反応して活発に細胞形態・運動能を変化させ、血管が伸長する方向を決定する。本年度は、これまで樹立してきたトランスジェニックゼブラフィッシュの生体蛍光バイオイメージング解析を行い、Tip細胞の形態・運動能を制御するシグナル伝達系を解析した。その結果、Tip細胞は先導端で活発にアクチン重合を引き起こし、フィロポディアを形成すること、さらにこのフィロポディアの形成にRhoファミリー低分子量G蛋白質の1つであるCdc42が関与することを示した。またCdc42は、フォルミンファミリーに属するアクチン制御因子であるFormin-like 3(Fmnl3)に直接結合、活性化することでフィロポディア形成を惹起することを示した。 血管特異的Fucciシステムを用いた生体における内皮細胞周期の可視化と、それを制御するメカニズムの解明 血管特異的Fucciフィッシュを用いて、節間血管と尾側血管の形成過程における内皮細胞の細胞周期を観察し、これら血管の形成機構を解析した。その結果、1)節間血管は、背側大動脈から細胞周期を活発に回転した内皮細胞が出芽し、背側に向かって遊走する過程で1回細胞分裂をすることで形成されること、2)尾側血管は、形成初期のアンジオブラストの発生と増殖、後期の血管内皮細胞の増殖と遊走により形成されることを示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、当初の研究目標までほぼ到達することが出来たことから、おおむね順調に進展していると考える。現在、血管特異的Fucciシステムを用いた生体における内皮細胞周期の可視化のプロジェクトについては、これまでの研究成果を論文発表するための準備を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度以降も、これまでと同様に解析を進めていく。血管新生過程のTip細胞の形態・運動能制御機構については、Tip細胞に作用する血管新生因子を同定すると共に、その下流シグナルを詳細に解析する。血管特異的Fucciシステムを用いた生体における内皮細胞周期の可視化のプロジェクトについては、尾側血管に焦点を当て、尾側血管が形成される分子メカニズムの解明を試みる。ただ、これまでの解析から、さらにいくつかのトランスジェニックゼブラフィッシュが必要となっており、これらフィッシュを迅速に樹立し、さらに効率的に解析を進めていく。
|