研究領域 | 感染・炎症が加速する発がんスパイラルとその遮断に向けた制がんベクトル変換 |
研究課題/領域番号 |
22114003
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松岡 雅雄 京都大学, ウイルス研究所, 教授 (10244138)
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キーワード | HTLV-1 / ATL / 制御性Tリンパ球 / HBZ / Tax |
研究概要 |
本研究では免疫系で中心的な働きをしているCD4陽性Tリンパ球、制御性Tリンパ球をHTLV-1が如何に変調させ免疫系をハイジャックし、発がんへと繋がっているかを明らかにし、その治療法開発へと繋げることを目的としている。HBZはTGF-beta/Smad経路を活性化してFoxp3遺伝子の転写を誘導することを明らかにした。HBZによるTRF-beta/Smad経路の活性化はTリンパ球の増殖に影響を与えず、選択性があることを見出した。HBZで誘導されるFoxp3陽性細胞ではinduced Treg細胞が増加していた。HBZがCD4陽性細胞の機能障害を起こし、免疫不全の原因となっていることを報告した。このためHBZトランスジェニックマウスはリステリア感染、単純ヘルペスウイルス感染症に対して感受性が増しており、それはCD4陽性Tリンパ球においてTh1サイトカインの産生障害に依ることを報告した。このサイトカイン産生障害の原因はHBZがNFAT, AP-1経路を阻害するためである。HBZトランスジェニックマウスの解析からリンパ球浸潤が皮膚・肺・腸管にあり、HBZ発現細胞の細胞接着、遊走が亢進していることが原因であることを明らかにした。HBZを抗原としてマウスを免疫し、細胞傷害性Tリンパ球の誘導に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、予定していたHBZによる炎症誘導機構、HBZの免疫障害作用、HBZに対する免疫誘導に関して順調に遂行できている。今後、個体レベルでの炎症、免疫に与える影響を解析していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果を踏まえ、HBZによる増殖、炎症、発がんという作用を繋ぐ機序を明らかにし、HBZによる病原性発現機構の全体像を明らかにする。
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