計画研究
ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)は生体内で感染細胞を増加させ感染機会を増大させる。我々はHTLV-1のアンチセンス転写産物であるHTLV-1 bZIP factor(HBZ)遺伝子が全てのATL症例で発現し、ATL細胞の増殖に関与していることを報告してきた。本研究では免疫系で中心的な働きをしているCD4陽性Tリンパ球、制御性Tリンパ球をHTLV-1が如何に変調させ免疫系をハイジャックし、発がんへと繋がっているかを明らかにし、HTLV-1感染・免疫失調・発がんへと繋がる発がんスパイラルを解明することで、その治療法開発へと繋げる。1)HBZを発現するワクチニアウイルスの接種により誘導される細胞傷害性Tリンパ球が、in vivoにおいてHBZ発現Tリンパ球への抑制作用があることを確認した。2)胸腺で高発現する転写因子TCF-1, LEF-1がTaxと結合して、HTLV-1のウイルス複製を抑制することを明らかにした。末梢性Tリンパ球ではTCF-1, LEF-1は発現が減少するためTaxの機能は障害されない。一方、サルT細胞白血病ウイルス1型感染ニホンザルをモデルとして胸腺でウイルス感染細胞が著減していることを示した。この実験結果はHTLV-1の末梢性Tリンパ球指向性の分子機序を明らかにするものである。3)HBZトランスジェニック(HBZ-Tg)/インターフェロンガンマノックアウト(IFN-γ KO)マウスでは炎症が強く抑制されていた。6ヶ月の観察期間の後に病理解析を行い、HBZ-Tgでは10匹中3匹にリンパ腫の発症を認めたのに対して、HBZ-Tg/IFN-γKOではリンパ腫は認められなかった。4)HBZ RNAがTリンパ球数を増加させることを見出した。一方、HBZタンパク質はTリンパ球数を減少させた。その機序としてHBZ RNAはアポトーシス抑制に作用し、タンパク質はアポトーシを促進することを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
HBZ RNAがTリンパ球の生存を促進し、たんぱく質が抑制するという興味深い結果を得た。これまで不明であったHTLV-1の末梢Tリンパ球に対する指向性の分子機序を明らかにした。
HBZ RNAによる増殖促進、アポトーシス抑制に関して、その詳細な機序を明らかにする。また、HBZタンパク質の増殖促進に関しての解析を行う。HBZワクチンの実験に関しては、抗腫瘍効果を明らかにする。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 8件、 謝辞記載あり 7件) 学会発表 (20件) (うち招待講演 8件) 図書 (1件) 備考 (1件)
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