計画研究
感染性因子による発がん過程においては、感染組織における持続的炎症が重要な発がん要因のひとつになる。C型肝炎ウイルス(HCV)は肝発がんを引き起こす代表的なウイルスであり、特に持続的肝炎症が発がんの危険要因になる。炎症惹起とその維持に働くサイトカインの産生がHCV感染細胞およびその組織においてどのように制御されているかを明らかにできれば、炎症を人為的に制御する事が可能になると期待される。そこでHCV感染による炎症性サイトカインの直接あるいは間接的産生機序を明らかにすることにより炎症の持続を制御できるようになると考えた。HCV感染組織では免疫関与細胞に加えて、感染細胞自身からの炎症性サイトカイン産生が知られている。さらに、筆者等はHCV感染肝実質細胞と星細胞とのクロストークによってもサイトカインが産生されるようになる事を見いだした。これらの研究の延長として、HCV感染によりサイトカインが産生される新たな機構を探索した。その結果、炎症により惹起されるAPOBEC1がIL-8 mRNAを安定化させ、IL-8産生亢進に寄与する結果を得た。APOBEC1はRNA編集酵素であり、各種mRNAと3’非構造領域内のAUに富む配列と会合する性質を持つ。その性質上、IL-8 mRNA以外にも3’非翻訳領域にこれらの特徴を持つ他のサイトカインmRNAとも結合した。mRNAに及ぼすAPOBEC1の働きをIL-8 mRNAと会合する性質を解析する事により進め、APOBEC1との会合はIL-8 mRNAの安定性を高める事を明らかにした。IL-8 mRNAとの会合にはhnRNPQがAPOBEC1と会合する事が必要であった。APOBEC1と会合しているIL-8 mRNAでは、3’非構造領域の変異が有意に高い事も見いだした。これらの結果は、APOBEC1がmRNAに会合して,物理的な性状あるいは機能を変化させ、炎症状態におけるサイトカイン産生に影響を及ぼしている可能性が考えられた。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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