研究領域 | 感染・炎症が加速する発がんスパイラルとその遮断に向けた制がんベクトル変換 |
研究課題/領域番号 |
22114005
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
大島 正伸 金沢大学, がん進展制御研究所, 教授 (40324610)
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研究分担者 |
大島 浩子 金沢大学, がん進展制御研究所, 助教 (80362515)
石川 智夫 金沢大学, がん進展制御研究所, 助教 (70322162)
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キーワード | 炎症 / 消化器がん / 感染 / マクロファージ / マウスモデル / TNF-α |
研究概要 |
消化管腫瘍発生には、遺伝子変異による「細胞の腫瘍化」と生体反応による「微小環境形成」の双方が必要である。胃がん組織微小環境では、ヘリコバクター・ピロリ菌感染による炎症反応が、がん細胞の増殖亢進や未分化性の維持が誘導されていると考えられる。本研究では、ヒト胃がんを分子発生機序から再現して、炎症をともなう胃がんを自然発生するGanマウスモデルを用いて、がん微小環境の重要な構成成分と考えられるマクロファージに着目した研究を遂行している。今年度は、マクロファージ由来サイトカインであるTNF-αに着目して研究を遂行した。腫瘍形成におけるTNF-αの役割を解析するため、GanマウスとTNF-α遺伝子(Tnf)欠損マウスを交配して、Gan/Tnf(-/-)マウスを作製し、50週齢で病理解剖した。その結果、Tnf(-/-)マウスでは顕著に胃がん発生が抑制された。 さらに、Gan/Tnf(-/-)マウスをX線照射して、GFP遺伝子トランスジェニックマウスから骨髄移植を行なうと、Gan/Tnf(-/-)マウスでもGan/Tnf(+/+)マウスと同様の胃がんが発生した。以上の結果から、胃がん組織に浸潤する骨髄由来マクロファージがTNF-αを産生し、胃がんの発生を促進していることが示唆された。マクロファージはM1型とM2型に分化する事が知られており、腫瘍関連マクロファージは、増殖因子などを産生するM2型に分化していると考えられている。CD206抗体を用いた免疫染色により、Ganマウスの胃がんに浸潤するマクロファージの多くがM2に分化していることが明らかとなった。一方で、Gan/Tnf(-/-)マウスの胃腫瘍組織では、M2マクロファージの割合が減少する傾向が認められた。したがって、TNF-αはマクロファージのM2分化に関与して発がん促進に作用する可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GanマウスとTnf欠損マウスの交配実験から、胃がん発生促進にTNF-αが重要に関与していることを遺伝学的に証明することに成功した。研究の目的にある、CagAおよびMyd88遺伝子改変マウスとの交配実験も予定通りに進められている。
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今後の研究の推進方策 |
TNF-aによる発がん促進の分子機序をマウス組織およびヒトがん細胞を用いた実験により明らかにして、炎症依存的な発がん促進因子の解明を目指した研究を進める。また、Myd88遺伝子改変マウスとGanマウスの交配によって、すでに作製した複合遺伝子モデルマウスの解析を行ない、発がんにおける自然免疫反応の作用を明らかにする。
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