研究領域 | 感染・炎症が加速する発がんスパイラルとその遮断に向けた制がんベクトル変換 |
研究課題/領域番号 |
22114005
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
大島 正伸 金沢大学, がん進展制御研究所, 教授 (40324610)
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研究分担者 |
大島 浩子 金沢大学, がん進展制御研究所, 助教 (80362515)
石川 智夫 金沢大学, がん進展制御研究所, 助教 (70322162)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 炎症 / 消化器がん / 感染 / マクロファージ / マウスモデル |
研究実績の概要 |
ヘリコバクター・ピロリ菌感染は胃がん発生の重要な危険因子である。感染がん発生過程では、微生物が産生する因子による作用と、感染に起因した生体反応による作用の双方が関与していると考えられている。本研究は、炎症反応依存的に胃がんを自然発生するマウスモデル(Ganマウス)を用いた解析により、感染刺激による発がん促進機構を明らかにすることを目的として実施する。これまでの研究で、Ganマウスを無菌化すると、炎症性サイトカイン発現量が低下し、同時に胃がん発生が顕著に抑制されることから、感染による自然免疫反応の活性化が発がんに重要と考えられた。そこで、自然免疫によるサイトカイン誘導に重要な役割を果たす分子、IRF5に着目し、GanマウスとIRF5遺伝子(Irf5)欠損マウスとの交配実験を行ない、Gan Irf5 (+/+)マウスとGan Irf5(-/-)マウスを作製した。さらに、腸管腫瘍発生マウスモデルであるApc遺伝子欠損マウスとIrf5(-/-)との交配も同時に進めて、Apc (+/-) Irf5(-/-) 複合変異マウスを作製した。これまでにGan Irf5複合マウス3匹について40-50週齢での病理解剖を実施したが、胃がん発生の有意な変化は認められなかった。次年度にGanおよびApc双方の複合マウスについて腫瘍症状の詳細な解析を行ない、IRF5を介したシグナルによる胃がん発生への影響を明らかにする。また、本課題研究ではナノゲルによる低分子デリバリーによる胃がん治療実験を、秋吉教授(京大)と共同で進めている。これまでに、ナノゲルに包合したTNF-α中和抗体とTGF-β阻害薬の低分子をナノゲルに入れて、Ganマウス胃がん組織の粘膜下へ投与実験を実施した。その結果、ナノゲルは投与後1週間後まで胃がん組織間質に定着することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
胃がんモデルマウスの無菌化実験や薬物投与実験により、感染刺激が胃がん発生に重要であることを示した。その過程で本課題研究の研究対象でもあるマクロファージの浸潤と活性化が重要である事を明らかにし、それらが産生するサイトカインが重要であるとの結論を導き出した。 発がんスパイラル研究領域内で、谷口(東大)との共同研究により、自然免疫活性化によるサイトカイン産生に重要な因子IRF5の遺伝子欠損マウスと胃がんモデル(Ganマウス)および腸管腫瘍モデル(Apc716マウス)との交配実験は順調に進んでおり、解析用の複合マウスのほとんどがすでに得られている。今後はこれらの目的マウスの解析を中心に行なう。 また、研究領域内の秋吉(京大)との共同研究により、ナノゲルを用いた胃がん組織への物質デリバリー実験も予定通りに着手し、ナノゲルを胃がん組織の粘膜下組織に移植すると薬物を1週間程度徐放する事が出来ることを見いだした。この方法を利用して、今後のマクロファージ枯渇実験や治療実験へとつなげて行く。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方策として、以下に記載するIRF5遺伝子欠損マウスとの交配実験、マクロファージの枯渇実験、および自己免疫性炎症による発がん誘導実験を中心に本課題を推進する。 1. すでに作製したGan Irf5-/-マウス、およびApc716 Irf5-/-マウスの病理解剖を進めて、IRF5欠損による自然免疫・炎症反応の誘導、および消化管腫瘍発生への影響を明らかにする。とくにIRF5による腫瘍促進と腫瘍抑制の双方の可能性を検証するため、腫瘍発生期および腫瘍形成期の週齢で解析を行ない、炎症性サイトカインの発現誘導の状況と腫瘍症状との比較解析を実施する。 2. 腫瘍マクロファージによる発がん促進機構を解明するため、ナノゲルによるCSF-1やCD11b中和抗体等の投与実験を実施してマクロファージを枯渇させ、Ganマウス胃がん症状への影響を病理学的に解析する。さらに、レーザーマイクロダイセクションにより、マクロファージが枯渇した領域の腫瘍上皮、間質組織と、マクロファージが浸潤した領域のサンプルとの間で、網羅的遺伝子発現解析を実施して比較解析を行なう。 3.Th2型の免疫反応が優位なBALB/cバックグランドのGanマウスと、免疫抑制因子であるPD-1遺伝子の欠損マウスとの交配実験を行なう。BALB背景でPD-1を欠損すると自己免疫性の胃炎を発症することが報告されている。このような異なる免疫反応に由来した炎症と発がんの関係を明らかにすることで、炎症の型別による発がんへの影響の違いを明らかにする。
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備考 |
胃炎および胃がんモデルマウスおよび野生型マウスの正常胃粘膜の網羅的遺伝子検索結果から、目的遺伝子の発現変化を検索することが出来るシステム。
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