研究領域 | 感染・炎症が加速する発がんスパイラルとその遮断に向けた制がんベクトル変換 |
研究課題/領域番号 |
22114005
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
大島 正伸 金沢大学, がん進展制御研究所, 教授 (40324610)
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研究分担者 |
石川 智夫 金沢大学, がん進展制御研究所, 助教 (70322162)
大島 浩子 金沢大学, がん進展制御研究所, 助教 (80362515)
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研究期間 (年度) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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キーワード | 炎症 / 消化器がん / 感染 / マクロファージ / 自然免疫 / マウスモデル |
研究概要 |
ヘリコバクター・ピロリ菌感染にともなう慢性炎症は、胃がん発生に重要な役割を果たしており、炎症反応により構築される微小環境ががん細胞の増殖や生存に関与していると考えられている。本研究では、COX-2経路の活性化により発生する炎症反応に依存して胃がんを発生するマウスモデル(Ganマウス)を用いて、感染刺激による発がん促進機構を、炎症性微小環境の形成に着目しながら明らかにする事を目的として実施している。これまでの研究により、無菌化飼育したGanマウスでは、COX-2経路依存的な炎症性微小環境が構築されず、腫瘍形成が抑制されるので、炎症性微小環境形成には細菌感染刺激が必要である事を明らかにしている。そこで、自然免疫活性化によるサイトカインの誘導に重要な因子、IRF5の遺伝子欠損マウスとGanマウスおよび腸管腫瘍モデルApc遺伝子欠損マウスを用いた交配実験による研究を推進した。これまでに、Gan Irf5 (-/-)、Apc (+/-) Irf5 (-/-)マウスの作製を終えて、40~50週齢に達した複数個体を解析した結果、IRF5欠損により、腫瘍組織におけるマクロファージ浸潤は影響を受けないが、IL-1、IL-6などの炎症性サイトカインの発現が顕著に低下したが、発現がIRF5に依存しない炎症性因子も明らかになった。一方で、胃および腸管における腫瘍組織はIRF5を欠損しても、これまでの観察では退縮等の認められていない。今後、解析個体を増やして、遺伝子発現プロファイルの変化を、無菌化したGanマウスと比較解析し、炎症性微小環境で誘導される因子の中から発がんに重要な候補を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
胃がんモデルマウスを用いて、マクロファージ浸潤が腫瘍細胞の生存に重要である事を明らかにした。一方で、新学術領域内の谷口(東大)との共同研究により、自然免疫で活性化するサイトカインシグナルの全てが発がんに関与しているわけではない事も明らかとなり、発がんを促進する炎症性サイトカインシグナルの特定に向けて着実に成果が得られている。また、最終年度に解析するためのマウスモデルの作製も完了した。
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今後の研究の推進方策 |
Gan Irf5 (-/-)およびApc (+/-) Irf5 (-/-)マウスの解析を実施し、IRF5欠損による炎症性微小環境の構成細胞成分の変化、発現遺伝子の変化を明らかにし、腫瘍形成へ影響する成分・因子、影響しない成分・因子を明確にする。また、遺伝子発現プロファイルを、以前実施した無菌化Ganマウスの胃腫瘍組織と比較解析し、発がん促進に作用するサイトカインおよびそれに関連したシグナルを明らかにする。それらに対する中和抗体や阻害薬等を用いて、新学術領域内の秋吉(京大)との共同研究により、Ganマウスに対してナノゲルによる胃がん発生の治療実験を実施する。
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