計画研究
がんの約20%は感染症が関与していることが疫学的に示されている。その中でも、ヘリコバクター・ピロリ菌感染は胃がん発生原因として知られており、感染にともなう慢性胃炎が発癌促進に関与すると考えられている。本研究では、COX-2/PGE2経路の活性化とWntシグナル活性化の相互作用により炎症反応依存的に胃がんを自然発生するGanマウスを用いて、感染刺激による発がん促進機構を、炎症性微小環境の形成に着目しながら解明することを目的として実施した。Ganマウスを無菌化飼育すると、炎症性微小環境の形成が抑制されて胃がん発生も顕著に抑制されたことから、自然免疫が微小環境形成に関与して発がん促進すると考えられた。そこで、自然免疫反応により活性化される転写因子、IRF5に着目してGanマウスとIrf5-/-マウスとの交配実験を行った。IRF5はToll様受容体(TLR)の活性化に依存的なサイトカイン産生に重要な役割を果たす分子として単離された。IRF5を欠損したGanマウスでは、Irf5+/+の対照群Ganマウスと同様の胃がんが自然発生した。興味深いことに、遺伝子発現解析の結果、IRF5を欠損しても対照群と同様のサイトカイン発現プロファイルが認められた。また、腸管腫瘍発生モデルであるApc716マウスとIrf5-/-マウスとの交配実験、およびIrf5-/-マウスに対して炎症性腸管腫瘍を誘発するAOM/DSS投与実験を行った結果、どちらの実験においても腸管腫瘍発生頻度、成長等への影響は認められなかった。一方で、TLRの重要なエフェクター分子であるMyD88を欠損した腫瘍発生モデルでは、COX-2やサイトカイン発現が抑制されて発がんが顕著に抑制される事が報告されている。したがって、以上の研究成果から、TLR/MyD88下流ではIRF5以外の転写因子が炎症性微小環境形成に関与すると考えられた。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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