研究領域 | 感染・炎症が加速する発がんスパイラルとその遮断に向けた制がんベクトル変換 |
研究課題/領域番号 |
22114006
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
東 健 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60221040)
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研究分担者 |
丸澤 宏之 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80324630)
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研究期間 (年度) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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キーワード | 感染 / 炎症 / 発がん / ヘリコバクター感染 / AID |
研究概要 |
AIDを恒常的に発現するトランスジェニックマウスの肝組織から肝幹/前駆細胞、成熟肝細胞を採取しレシピエントマウスに移植を行い、その表現型を検討した結果、AIDを持続発現した肝前駆細胞を移植したレシピエントマウスには高率に肝がんが発生すること、発生した肝がんを構成している腫瘍細胞は移植した肝前駆細胞に由来していることが認められた。そこで、移植した肝前駆細胞と、発生した肝がん細胞の全エクソン配列を次世代シーケンサーにより決定し、比較解析を行った結果、肝発がん過程の生じたゲノム異常の全体像をとらえることができた。以上の結果は、感染や炎症の結果、組織幹/前駆細胞に多段階にゲノム異常が生成・蓄積することが腫瘍細胞の発生につながっていることを示している。一方、ヘリコバクター属のスイス菌感染の病態を検討した結果、スイス菌感染マウスでは3カ月後にほぼ100%リンパ濾胞が形成された。また、スイス菌をマウスに経口感染させることで、CXCL13の発現が増加した。CXCL13は、B細胞を選択的に誘引する走化性因子であり、その受容体であるCXCR5との相互作用により、脾臓、および、リンパ節内の濾胞形成に関わる因子である。スイス菌感染後の胃粘膜においても、CXCL13の発現が上昇することから、胃病変発症との関連性が示唆された。そこで、スイス菌感染により発現誘導されるCXCL13に着目し、その中和抗体である抗CXCL13抗体をマウスに腹腔内投与することで、胃リンパ濾胞形成の抑制につながるか否かについて検討した。その結果、抗CXCL13抗体投与後のスイス菌感染マウスの胃粘膜おいて、リンパ濾胞形成が抑制され、CXCL13発現誘導に関与するNF-κB2の活性化も阻害された。これらの結果は、スイス菌感染によって誘導されたCXCL13が、胃リンパ濾胞形成に関与していることを支持し、今後、抗CXCL13抗体を用いたヒト胃MALTリンパ腫発症の治療効果が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
C型肝炎とヘリコバクター感染における、感染-炎症-発がんメカニズムについて、解明が進んできている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、C型肝炎とヘリコバクター感染における、感染-炎症-発がんメカニズムにもとづいた、新しい治療法になり得るターゲット分子同定を進める。
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