計画研究
これまでに、ヒト消化器がんの発生過程において、感染や炎症反応により上皮系細胞に異所性にAID(Activation-induced cytidine deaminase)が発現誘導されること、その結果、遺伝子変異が生成・蓄積し、腫瘍発生に重要な役割を果たしていること、AIDの欠損により炎症性消化器発がんの発生頻度が低下することが認められている。そこで、ピロリ菌感染慢性胃炎粘膜に潜在する遺伝子異常の全体像を明らかにするため、ピロリ菌陽性胃がん症例のがん部ならびに非がん部胃炎粘膜について、次世代シーケンサーを用いた全エクソン解析を行ったところ、胃がん部だけでなく、慢性胃炎粘膜にもさまざまな遺伝子変異が蓄積していることが明らかになった。興味深いことに、がん抑制遺伝子TP53の遺伝子変異が慢性胃炎粘膜に高頻度に潜在していることがわかり、塩基変化のパターン解析からはAIDによる遺伝子変異導入パターンに一致するものが多くを占めていることが確認された。一方、スイス菌は、ブタ、ヒトを含む多くの動物種の胃に感染し、胃MALTリンパ腫発生に関与することが知られている。スイス菌感染後の胃粘膜では、CXCL13やIFN-γの発現が亢進していることが認められ、IFN-γ欠損マウスでは、胃リンパ濾胞形成は認められず、T細胞受容体欠損マウスでは、野生型マウスと同様に、胃リンパ濾胞形成が認められた。さらにFACSで精製した野生型マウス由来のB細胞、DC、ならびに、FDCをスイス菌感染IFN-γ欠損マウスに移入すると、B細胞を移入したマウス胃粘膜において、IFN-γの産生が回復するとともに、胃粘膜において、多数のリンパ濾胞形成が認められた。以上より、スイス菌感染後の胃リンパ濾胞形成は、胃粘膜B細胞から産生されるIFN-γによって誘導され、さらに、胃粘膜に産生されたCXCL13が基点となって胃MALTリンパ腫発症をより高度に促進していることが示唆された。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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