計画研究
本研究では、「発がんスパイラル」の制御における免疫応答機構について、自然免疫系によるがん細胞の排除機構と平行して、細胞が遺伝子異常による「発がんスパイラル」のプロセスを辿る間に免疫系の攻撃から回避するメカニズムの解明を目指すことを目的とし、解析を進めている。本年度における検討から以下に示す結果を得ている。(1)自然免疫系によるがんの増殖・転移スパイラルの二重抑制機構の存在とその実体の解明に向け、メラノーマ細胞の排除に重要な細胞群の検討を行った。その結果、がん転移における微小転移巣の制御にマクロファージが中心的な役割を果たしている知見を得た。マクロファージがどのようにがんを排除しているか、今後、その機構の詳細について解析を行う。(2)がん化のプロセスで起こるタンパクや核酸の修飾による免疫原性の喪失について、HMGB1と核酸との関係を視野に入れて行うため、HMGB1のコンディショナルノックアウトマウスの作製を行った。HMGB1を欠損するとB細胞の分化に異常があるなど、興味深い知見が得られている。今後、発がんとHMGB1との関連、がん排除におけるHMGB1の役割について解析する。(3)発がんシグナルに関与する核酸認識システムの全容を明らかにするため、核酸受容体システムに関与する新規分子を複数同定した。現在それらの遺伝子欠損マウスの作製を進めており、germ line transmissionを確認している。今後、欠損マウスを用いた解析を進めていく。(4)新規コンパウンドIMF-001の作用機序と抗腫瘍活性について、複数の細胞死に関与する分子がリン酸化を受けることを見出した。今後、さらにその作用機序をについて解析を行うとともに、IMF改変体の検討、生体への応用を検討しつつ、有効な発がんスパイラル抑制による制がんベクトル変換技術開発を目指していく。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題において、がん転移におけるマクロファージの重要性を明らかにしたことや新規化合物の同定、作用機序の解明に一定の成果を挙げている。また、本研究課題を推進するために必要なコンディショナルノックアウトマウスは、既に作製を完了した、またはgerm line transmissionが確認された等、順調に進行している。今後、これらの資材を有効に活用していくことで、発がんと炎症、免疫応答の役割について解析が進むものと予想される。
本年度以降について、これまでの研究実施計画に沿って研究を推進していく。これまでのところ、研究の遂行に大きな問題点が生じるなど、支障は認められていない。今後についても、解析によって得られた結果をもとに考察を加え、研究の推進を図る所存である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)
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