研究領域 | 感染・炎症が加速する発がんスパイラルとその遮断に向けた制がんベクトル変換 |
研究課題/領域番号 |
22114007
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
谷口 維紹 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (50133616)
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研究分担者 |
根岸 英雄 東京大学, 生産技術研究所, 特任助教 (60514297)
柳井 秀元 東京大学, 生産技術研究所, 特任助教 (70431765)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 発がんスパイラル / 制がんベクトル / 核酸認識システム / 炎症 / 感染 |
研究実績の概要 |
本研究では、「発がんスパイラル」の制御における免疫応答機構について、自然免疫系によるがん細胞の排除機構と平行して、細胞が遺伝子異常による「発がんスパイラル」のプロセスを辿る間に免疫系の攻撃から回避するメカニズムの解明を目指すことを目的とし、解析を進めている。本年度における検討から以下に示す結果を得ている。(1)自然免疫系によるがんの増殖・転移スパイラルの二重抑制機構の存在とその実体の解明に向け、メラノーマ細胞の排除に重要な細胞群の検討を行った。その結果、IRF5ががん転移抑制において重要であること、NK細胞の活性化亢進に寄与していることを明らかにした。今後、その機構の詳細について解析を行う。(2)がん化のプロセスで起こるタンパクや核酸の修飾による免疫原性の喪失について、HMGB1と核酸との関係を視野に入れて行うため、HMGB1のコンディショナルノックアウトマウスの作製を行った。免疫担当細胞においてHMGB1を欠失させたマウスにおいて、B16の転移について検討を行い、転移抑制におけるHMGB1の役割について興味深い知見が得られている。今後さらに、発がん・転移抑制におけるHMGB1の役割について解析する。(3)発がんシグナルに関与する核酸認識システムの全容を明らかにするため、核酸受容体システムに関与する新規分子を複数同定した。現在それらの遺伝子欠損マウスの作製を進めており、germ line transmissionを確認している。今後、欠損マウスを用いた解析を進めていく。(4)新規コンパウンドIMF-001の作用機序と抗腫瘍活性について、複数の細胞死に関与する分子がリン酸化を受けることを見出した。今後、さらにその作用機序をについて解析を行うとともに、IMF改変体の検討、生体への応用を検討しつつ、有効な発がんスパイラル抑制による制がんベクトル変換技術開発を目指していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題において、IRF5がB16メラノーマの転移に重要であること、また、NK細胞の活性化にIRF5が寄与していることを明らかにしつつある。さらに、そのメカニズムについても興味深い知見を得つつあり、がん細胞の感知、IRF5を介した抗腫瘍応答の活性化機構が明らかになりつつあると考えている。これらの知見を得られたことから、この経路を阻害することにより、がんの転移・増殖を抑制できる可能性があり、また、本研究課題の目指すところである、自然免疫系によるがん細胞の排除機構の一端の解明に繋がると考えられる。また、制がんベクトル変換に向けた技術として、新規化合物の同定、作用機序の解明を行っており、これらのついても興味深い知見を得つつある。また、本研究課題を推進するために必要なコンディショナルノックアウトマウスは、既に作製を完了しており、がん細胞排除における役割などについて検討できる状況が整いつつある。これらの資材を有効に活用していくことで、発がんと炎症、免疫応答の役割について解析が進むものと予想される。以上の状況を総合して、本研究課題は順調に進展してきていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度以降についても、これまでの研究実施計画に沿って研究を推進していく。これまでのところ、研究の遂行に大きな問題点が生じるなど、支障は認められていない。今後についても、解析によって得られた結果をもとに考察を加え、研究の一層の推進を図る所存である。
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