計画研究
炎症・免疫応答が関与する発がんスパイラル機構の解明を目的とし、自然免疫受容体シグナルの炎症・抗腫瘍応答における役割という観点から研究を展開した。その結果、自然免疫受容体Dectin-1ががん細胞上に発現しているN型糖鎖を認識し、IRF5の活性化を介してNK細胞の抗腫瘍活性を亢進させることを明らかにした。実際、Dectin-1遺伝子欠損マウス、及びIRF5遺伝子欠損マウス肺において、B16F1メラノーマ細胞などのDectin-1に結合性を示すがん細胞の顕著な増殖が認められた。N型糖鎖を取り除いたがん細胞ではこのようなDectin-1依存性は見られなかった。また、Dectin-1ががん細胞を認識することによってIRF5依存的にINAM(IRF3-dependent NK-activating molecule)などの膜分子のmRNAが誘導され、これらの分子を介してNK細胞の細胞傷害活性が亢進するものと考えられた。これまで外来病原体を認識し、免疫応答シグナルを活性化する自然免疫受容体が、がん細胞を認識し、がんの排除に寄与するという報告はなく、今回の発見は自然免疫応答によるがんの排除機構に新しい視点を与えるものと考えられる。また、HMGB1コンディショナルノックアウトマウスを樹立し、炎症・感染における役割について解析を行い、HMGB1ががんの増悪に関与している証拠を得つつある。一連の解析結果は、発がんスパイラルの遮断・促進に関わるメカニズムの一端を明らかにしたものと考えられる。今後、これらの機構について詳細を明らかにしていくことで、がんの進展・増大を抑制する新規薬剤の開発に繋がっていくことが期待される。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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