研究概要 |
炎症の自然免疫応答は微小環境の構築・抗がん免疫の起動に関与する。特に慢性炎症は発がんのプロモーターとしてがん細胞の増殖・浸潤・転移を促進し、がん化を助長すると云う証拠が提出されている。一方、抗がん免疫応答は樹状細胞が免疫エフェクター細胞を活性化する所に起点があり、これを促進するのも炎症である。炎症の誘起するエピジェネティクス解析を腫瘍と免疫について比較解析する必要がある。本研究ではウイルスRNAが誘起する自然免疫シグナルと発がん・抗がん環境を分子レベルで明らかにし、発がんスパイラルの制御へ資することを目的とする。本年度は以下の成果を得た。 1. ウイルスRNAが誘起するRIG-I 活性化に2つのE3 ligase, TRIM25とRiplet, が関与する(Oshiumi, et al, PloS Pathog., 2013)。 2. ウイルス・宿主に限らずRNAは不完全なstem構造をとるとTLR3のリガンドとなりうる(Tatematsu, et al, Nat Commun., 2013)。 3. IFNを殆ど誘導せずに抗がん活性を発揮する(従って生体に無害な)化学合成RNA(ARNAX)を完成させた(Matsumoto, et al, Nat Commun., 2014 under revision)。 4. IRF-3 依存性のNK活性化分子INAMの生理機能を明らかにした(Kasamatsu, et al, J Immunol., 2014 under revision)。 化学合成RNAの毒性試験と前臨床試験プロトコールを作製中である。本RNAのアジュバント活性がヒト免疫細胞の活性化とがん細胞・線維芽細胞などへいかなる影響をあたえるかを解析し、抗がん環境の誘導に効果的であることを証明していく。
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