研究領域 | 感染・炎症が加速する発がんスパイラルとその遮断に向けた制がんベクトル変換 |
研究課題/領域番号 |
22114009
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
秋吉 一成 京都大学, 工学研究科, 教授 (90201285)
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研究分担者 |
松田 修 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00271164)
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キーワード | ナノゲル / 細胞特異性 / RGDペプチド / 抗体 / サイトカイン / タンパク質デリバリー |
研究概要 |
感染がんの発症メカニズムを理解しそれらを制御するには、その発がんスパイラル場(がん微小環境)を自在に操作する技術が必要である。ドラッグデリバリーシステム(DDS)技術を利用することによって、宿主応答を「発がん促進」から「発がん阻止」に変換する制がんベクトル変換が可能となると思われる。具体的には、申請者が独自に展開しているナノゲル工学やシャペロン機能工学を駆使することにより種々のDDSを構築し、新規ワクチンの開発とサイトカイン等の時間的、空間的徐放制御を行い、ピロリ菌感染、肝炎ウイルス感染あるいは炎症などに引き起こされるがん微小環境の機能解明とそのがん微小環境を改変することによる発がんスパイラルの制御法を開発する。 1)細胞指向性新規ナノゲルの開発:癌細胞や炎症細胞等に特異的に相互作用しえるナノゲルとしてRGDペプチド導入多糖ナノゲルの合成を行い、その合成方法を確立した。このRGDペプチド導入多糖ナノゲルと細胞との相互作用を評価したところRGDペプチドを未導入のナノゲルと比べ細胞との相互作用が増強されることが明らかとなった。また、このナノゲルと蛍光標識タンパク質を複合化し細胞との相互作用を検討したところ、高効率に細胞へタンパク質を導入し得ることも明らかとなった。 2)抗体結合新規ナノゲルの開発:まず、アミノ基置換ナノゲルと両末端スクシンイミドリンカーを反応させ、スクシンイミド基置換ナノゲルを合成した。次にそのナノゲルと抗体を反応させ、抗体修飾ナノゲルを得た。GPC測定より、ナノゲルへの抗体修飾を確認したところ一つのナノゲルに対して約1分子の抗体が修飾されていることが確認された。 3)新規ナノゲルとタンパク質との相互作用解析および機能評価:サイトカインおよび生理活性タンパク質であるBMP、FGF、IL-12とナノゲルとの相互作用をELISA法を用いて検討し、複合化条件を確立した。また、これらのタンパク質を封入したナノゲルをマウス投与したところ、タンパク質のみを投与した条件に比べ、血中濃度の低下を抑制されていることが確認され、ナノゲルによるタンパク質徐放効果が明らかとなった。 4)核酸デリバリー用ナノゲルの開発と機能評価:長鎖アルキルおよびカチオン性分子を導入したサイクロアミロースとリン脂質分解酵素を複合化させた核酸デリバリーシステムを構築し、その効果を検討した結果、酵素を複合化させない従来型キャリアと比べ、核酸導入効率および核酸の機能発現が効果的に向上した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
発ガンスパイラルを制御するための、サイトカインや核酸医薬のデリバリーシステム、例えば、細胞指向性ナノゲルの開発、また、プラスミドやsiRNAなどの核酸デリバリーシステム用のナノゲルの開発は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
新規に開発したナノゲルデリバリーシステムを用いて、研究分担者の松田との動物実験を行いまた、計画班員との共同研究を積極的に行う。
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