研究概要 |
本研究では、ショウジョウバエ幼虫のぜん動運動を制御する中枢回路をモデルとして、神経活動がメゾ回路内を特定の時空間パターンにしたがって伝播する仕組みを明らかにすることを目指している。ショウジョウバ工幼虫のぜん動運動は前後体節間を一方向に伝わる筋収縮の波である。これを制御する中枢神経回路は、各体節の運動神経細胞を一定の時間間隔で発火することで協調的な運動出力を生む。本年度研究においてはhalorhodopsin(NpHR)による裡経活動抑制の系をショウジョウバエで構築し、上記中枢回路の作動原埋を探った。NpHRは光照射により活性化するプロトンボンプで、これを特定の神経細胞に発現することで、その活動を操作(抑制)することが可能となる.まず運動神経細胞に特異的にNDHRを発現した幼虫に光照射を行うと、幼虫の体全体が弛緩することから、NpHRが昆虫においても機能することを確認した。次に、運動神経細胞の活動の一過的な抑制がぜん動運動に与える効果を調べるため、局所的筋収縮が尾端から頭端に向けて伝播している途中で、次に収縮する運動神経細胞の活動を抑制した際にぜん動連動にどのような影響がでるかを調べた。もし、運動出力がなくても介在神経細胞を介して回路内を神経活動が伝播するならば、運動神経細胞の活動とは関係なく、中枢内を活動が伝播すると予想される(モデル1)。一方,運動出力がないと次の体節へ活動が引さ継がれない場含に,.伝播は光によって一時的に停止すると考えられる(モデル2)。実験を行ったところ、モデル2が支持された。さらに興味深いことに、光照射を終了すると、ぜん動運動は停止した体節から再開した。この再開した、10秒以上の光照射の後でも見られた。以上の結果は、運動神経細胞の活動が隣接する体節への活動伝播に必要であることを示唆すると同時に、回路内に伝播の状態を記憶する機構が存在することを示している。
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