研究領域 | メゾスコピック神経回路から探る脳の情報処理基盤 |
研究課題/領域番号 |
22115002
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
能瀬 聡直 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (30260037)
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研究分担者 |
森本 高子 東京薬科大学, 生命科学部, 准教授 (10311648)
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研究期間 (年度) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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キーワード | 神経回路 / イメージング / 光生理学 / ショウジョウバエ / 運動回路 / オプトジェネティクス / 運動速度調節 / 分子遺伝学 |
研究概要 |
本研究では、ショウジョウバエ幼虫のぜん動運動を制御する中枢回路をモデルとして、神経活動がメゾ回路内を特定の時空間パターンにしたがって伝播する仕組みを明らかにすることを目指している。ショウジョウバエ幼虫のぜん動運動は前後体節間を一方向に一定のスピードで伝わる筋収縮の波である。昨年度までの計画において、ぜん動運動の速度の制御に重要な役割を果たす新規介在ニューロン(per-positive segmental interneurons: PMSIs)を同定した。PMSIsは、各体節に存在する局所神経細胞で、ぜん動運動時に前後体節間を伝わる波状の活動パターンを示した。これまでの解剖学的、機能的解析により、PMSIsは、各体節内で局所的に軸索を伸張し、運動神経細胞に直接結合し抑制的に働く介在神経であることが分かっていた。また、その活動を、一時的に阻害すると、ぜん動運動の速度が半分近くに減少することから、PMSIsは運動の速さを制御していることが示唆された。本年度は、PMSIsが速度を調節する機構をより詳細に解析するため、ハロロドプシンを用い活動を一時的に阻害したときの、運動神経の活動を電気生理学的に測定した。その結果、運動時のバーストの長さが通常の2倍以上に長くなっていた。また、運動神経細胞との同時カルシウムイメージングにより、PMSIsはぜん動運動時に同体節内の運動神経細胞に、少し遅れて活動することを示した。以上の結果は、PMSIsが各体節における運動神経細胞の発火時間を抑制的に調節することにより、ぜん動運動が体節間を伝わる速さを制御していることを示唆している。一方、ぜん動運動時に周期的な活動を示す新規の介在神経細胞をカルシウムイメージングにより探索し、グルタミン作動性の前運動神経細胞を2種類、さらに上流のGABA作動性介在神経細胞を1種類同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、PMSIニューロンの速度制御における機能を明らかにした。また、ぜん動運動時に周期的な活動を示す新規の介在神経細胞を3種類同定した。
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今後の研究の推進方策 |
新規に同定した介在神経細胞の機能解析を進める。より時間空間分解能の高いオプトジェネティクス解析システムを確立し、運動神経細胞やPMSIsのぜん動運動制御における役割をより詳細に解析する。
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