研究概要 |
哺乳類の大脳新皮質は複雑な内部回路をもち、その機能解析は困難である。しかしこの困難は、大脳新皮質を基本単位の繰り返し構造に還元できれば大きく軽減される。申請者らは,多数の分子マーカーを用いた検索により、マウス新皮質第5層において、主要な錐体細胞である皮質下投射細胞(SCPNs)が細いカラム状(微小カラムと名付けた)に配置していることを発見した。この微小カラムは30-35μm程度の周期で周期的に配置しており、古典的な皮質カラム(幅200-500μm)に比してはるかに微細な構造である。さらに,視覚野において,個々の微小カラムが異なる脳機能に対応するという予備的結果を得ている。以上の結果は、この微小カラムが大脳新皮質の基本的な単位である可能性を示唆しており、この単位とそれに結合するメゾ回路を解析することにより,新皮質全体への理解が促進されると期待される。本年度は、(1)微小カラムが機能単位として動作するか、および(2)微小カラムに内部構造があるかを明らかにすることを目的とした研究を行った。(1)を明らかにするために、微小カラムのin vivoでの活動を遺伝子発現を指標として解析し、微小カラム内の細胞の活動に強い相関があることを示した。さらに、スライス上で光刺激を用いて局所回路を解析する実験系を作成し、予備実験をすすめた。(2)を明らかにするために、微小カラム内の細胞の多様性を遺伝子発現や神経結合パターンを指標として解析し、微小カラムが正確な内部構造を持つことを示した。これらの結果の一部は論文審査中および論文作成中である。
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