研究領域 | メゾスコピック神経回路から探る脳の情報処理基盤 |
研究課題/領域番号 |
22115004
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
細谷 俊彦 独立行政法人理化学研究所, 局所神経回路研究チーム, チームリーダー (70272466)
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キーワード | 脳 / 神経 / 大脳新皮質 / 哺乳類 / マウス / 視覚 / 体性感覚 |
研究概要 |
大脳新皮質は脳の大きな部分を占め、感覚、運動、記憶、行動計画など様々な高次精神機能を担う。大脳新皮質の回路は極めて複雑であり、このことが理解の大きな障害になっている。当研究室では、大脳新皮質神経回路の微細秩序構造を探るために、マウス大脳新皮質第5層の微細構造の解析を行っている。 まず第5層の主要なタイプの神経細胞の一種である皮質下投射細胞が、id2遺伝子の特異的発現によって良くラベルできることを示した。さらに、皮質下投射細胞が第5層内で層に垂直な方向に並ぶ傾向を持ち、微小なカラムを作っていることが分かった。このような微小カラムは多数周期的に並んでいた。また、特定の視覚刺激を与えた時、微小カラムの中の神経細胞が類似した反応を示すことを活動依存的な遺伝子発現を用いて見いだした。 以上から、マウス大脳新皮質第5層には、皮質下投射細胞からなる微小なカラム状の機能的な単位が存在し、このような単位が多数平行に配置していることを示唆している。さらにこのような微小カラムは発生上近縁でない細胞によって形成されていることを示し、論文として発表した。 この結果は、大脳新皮質の局所回路にはこれまで知られていなかった微細な秩序構造があることを示している。また小さな単位が繰り返していることから、大脳新皮質回路の少なくとも一部の成分は繰り返し構造を持つ可能性を示唆している。 これまでの研究をさらに発展させるため、微小カラムの2次元配置、微小カラム中の神経細胞の多様性、スライス電気生理学実験による神経結合解析などに着手した。またin vivoで神経活動を観察するためのイメージング法をほぼ確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一に、基本的な解析についての論文を発表した。さらに、微小カラムの2次元配置の解析、微小カラム中の神経細胞の多様性解析、スライス電気生理学実験による神経結合解析について、予備的結果を得た。またin vivoイメージングの実験系をほぼ確立した。以上より、研究の進展はおおむね順調であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
現在の研究をさらに進展させるため、以下のテーマを推進する。「微小カラムの脳表に平行な方向の2次元配置の解析」、「微小カラムに含まれる神経細胞の結合のスライス電気生理学による解析」、「微小カラムに含まれる神経細胞の活動特性のin vivoイメージングによる解析」、「微小カラムに含まれる神経細胞の多様性の解析」、「皮質下投射細胞以外の細胞の3次元配置の解析」。これらの研究を遂行するため、生理学実験装置の整備も行う。
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