研究領域 | メゾスコピック神経回路から探る脳の情報処理基盤 |
研究課題/領域番号 |
22115004
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
細谷 俊彦 独立行政法人理化学研究所, 局所神経回路研究チーム, チームリーダー (70272466)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 脳 / 神経 / 大脳新皮質 / 哺乳類 / マウス / 視覚 / 体性感覚 |
研究実績の概要 |
細胞の3次元分布を脳全体から取得する方法を確立し、微小カラムの三次元分布と脳領野間での分布の詳細を解析した。この解析の結果、微小カラムが大脳新皮質に沿った特異的な2次元配置をとっていることがわかった。生きたマウスの大脳新皮質第5層の細胞の Ca 信号を画像化する手法の効率化を行い、微小カラムに含まれる細胞の活動計測を進めた。大脳皮質のギャップジャンクションの解析をスライスパッチ法を用いて行った。マウス大脳皮質第5層の興奮性細胞の間には、細胞タイプ特異性と空間配置特異性とを持ち微小カラムに関連した精密なギャップジャンクションネットワークがあることを発見した。このネットワークは発生期に特異的であり、微小カラムの神経回路の形成に関与している可能性がある。スライス電気生理学実験により、微小カラム内の細胞には共通な細胞から大きな入力がはいっていることを示す結果を得たので、入力源の探索実験を行なった。第5層への主たる入力源である第2/3層の興奮性細胞でチャンネルロドプシンを発現し、これらを光刺激して活動電位を発生させた状況下で微小カラムに入る共通入力を解析する実験系を作成した。第5層の細胞が、層内での細胞1-2個程度の深さの違いによって異なる遺伝子発現や軸索投射を示すことがわかったので、さらに多数の遺伝子を用いて解析を行った。その結果、第5層内の深さによって不連続に遺伝子発現が変わる場合があること、複数のタイプの興奮性細胞が同様な配置を示すことなどがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ギャップジャンクションネットワークの発見は予想外の進展であり、期待以上の達成であると考えている。微小カラムおよび関連する大脳新皮質回路の形成に関与している可能性が高く、さらなる発展が期待できる。 微小カラムの3次元分布の詳細が明らかになりつつある点は期待通りと考えている。 In vivo Ca imaging は、第5層が脳深部であることなどから条件の最適化に予想より時間がかかった。十分な感度を達成するにいたったので、データ取得の効率化を行う。
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今後の研究の推進方策 |
微小カラムの三次元分布について、詳細の解析を継続する。GFP組み込みマウス、神経トレーサーなどの複数の方法で、細胞を染色した解析を行う。In vivo Ca イメージングの実験を継続し、微小カラム内や隣接カラムの細胞の活動相関を測定する。ギャップジャンクションネットワークの詳細を解析する。微小カラムへの共通入力をもたらす細胞の探索を継続する。 多様な細胞の3次元分布を解析し、微小カラムとの関連を検討する。微小カラムの神経可塑性への関与の検討を開始する。
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