研究領域 | メゾスコピック神経回路から探る脳の情報処理基盤 |
研究課題/領域番号 |
22115004
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
細谷 俊彦 独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, チームリーダー (70272466)
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研究期間 (年度) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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キーワード | 脳 / 神経 / 大脳新皮質 / 哺乳類 / マウス / 視覚 / 体性感覚 |
研究概要 |
大脳皮質第5層の皮質下投射細胞(SCPN)が形成する微小カラムに関する以下の研究を行った。発生期の大脳皮質では、SCPN とCPN (対側投射細胞) はそれぞれ特異的にギャップ結合によって電気的に結合し、特にSCPNは微小カラムと同様な構造のネットワークをつくっていることを昨年度までに見出した。ギャップ結合が神経活動の増幅と同期をもたらすことを確認し、論文を投稿した。同一の微小カラム内の細胞は強い共通入力をうける傾向が高いことを昨年度までに示した。さらに精密な解析によってこれを確認し、また弱い入力は非選択的であることを示し、論文を作成した。In vivo での Ca イメージング技術の改良を継続し、多数の細胞から良好なシグナルが得られるようになった。この技術を用いて微小カラム内の細胞の応答特性の検討を継続した。SCPN は第5層の上部と下部では異なる遺伝子発現を示すことを昨年度までに見出した。このように制御された遺伝子発現は、微小カラムの内部構造を形成していると考えられる。この遺伝子発現制御の精密な定量解析および発生過程の検討を行い、論文を作成した。CPNや抑制性神経細胞など、SCPN 以外の細胞タイプについて3次元配置解析を行った。マウス以外の哺乳類脳サンプルを用いて、微小カラムの存在を検討する実験を開始した。これまで得られた微小カラムの解剖学的・生理学的特徴にもとづき、視覚情報の並列処理を行う神経回路モデルを作成した。これを用いて微小カラム内の細胞の受容野などについての予言を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
微小カラムが幅広い領野の第5層に存在することを確認できた。また種を超えて存在することも示されたため、微小カラムが進化的に保存された構造単位であることを確認できた。発生期の大脳皮質におけるギャップ結合に関する知見は20年以上にわたって混乱していたが、これが高密度に存在し高い細胞タイプ特異性を持つこと、および微小カラムと相同なネットワーク構造を作っていることを示した。この結果はギャップ結合による大脳皮質回路形成の制御機構の解析の基礎となる。微小カラムが特異的な回路を持つことを示すことができた。この回路構造は、古典的な大脳皮質カラムの回路モデルの候補ともなり得る。In vivo イメージングのターゲットとしては多くの実験より深い第5層を対象としているため、その技術の整備に比較時間がかかった。
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今後の研究の推進方策 |
以下のテーマを推進することにより、微小カラムと関連する回路の大脳皮質情報処理における機能を解析する。In vivo での微小カラムと関連する回路の活動をCa イメージングや電気生理学などの手法で測定する。特に、γ振動などの集団活動との関係を明らかにする。方位選択性カラムなどの古典的な大脳皮質カラムと微小カラムの関係を、3Dイメージングなどの手法により明らかにする。SCPN 以外の細胞タイプを含めた皮質内回路構造を、電気生理学的手法をもちいて解析する。細胞タイプ特異的かつ微小カラム状の構造をもつギャップ結合ネットワークの皮質回路形成における機能を、ギャップ結合の抑制実験などで解析する。微小カラム内のSCPN の出力が動物行動に与える影響を、可能な限り単純な定量解析ができる系を作成して解析する。微小カラムを持つ大脳新皮質回路のモデルを作成して回路の活動を予測し、実験で検証する。結果によってモデルを更新することにより、微小カラムを含めた回路の機能の概要の推定を行う。
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