研究実績の概要 |
個々の神経細胞は、全長で数ミリメートルにも及ぶ複雑な樹状突起構造を持つが、その複雑性の機能的意義は未解明である。その中でも、大脳皮質第5層錐体細胞が脳表近く第1層まで伸ばす樹状突起部位は、高次領野および視床からの入力を受けること、運動学習によって運動野第1層でのシナプス生成・消失が起こること、から、この部位でのシナプス情報統合の重要性が想定されている。しかし、その実体、機能、意義については不明である。そこで、本研究では、大脳皮質運動野第1層樹状突起・シナプスを、異なったメゾ回路からの情報が統合される基盤構造と位置づけ、この実体と演算機能、運動野メゾ回路最終出力としての個体運動に対する寄与を、主に光生理学的手法を用いて解明する。本年度は、マウスの頭部固定でのレバー前肢運動課題を開発し、この運動課題遂行中の第2/3層大脳細胞活動を2光子イメージングすることで課題関連細胞の同定を行った(Hira et al., J. Neurosci. 2013)。また高次運動野及び視床から一次運動野第1層に強いシナプス入力があることを蛍光トレーサー実験で解剖学的に明らかにするとともに(Hira et al., Front. Neural Circuits 2013)、カルシウム濃度感受性蛍光タンパク質を運動野に入力する神経細胞に発現させ、それらの運動野での軸索の活動を課題遂行中において計測可能とした。また運動野細胞でのシナプス後部スパイン活動もこのタンパク質を用いて計測可能になりつつある。また光遺伝学的手法を用いて計測領野外からのシナプス入力を操作することで、動物の運動行動に変化を誘発することに成功した。さらに、運動野に入力する軸索がどの細胞種に入力するかを調べる実験系を確立した。
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