計画研究
大脳皮質第4層における視床皮質結合は新生児期に視床からの入力を受けてリモデリングされる。しかしながら、そのリモデリングの経時的過程とそのメカニズムはわかっていない。本研究の主要課題として、マウス体性感覚野の第4層星状細胞(バレル細胞)の樹状突起が視床からの入力をうけて精緻化される過程をモデルとし、この問題の解明に挑戦してきた。本年度の大きな進展として、研究の主要部分を3月27日付けのNeuron誌(Mizuno et al., 2014)で発表することができた。これまでに個々のバレル細胞の樹状突起の高輝度RFP標識を可能とする“Supernova system”と、視床皮質軸索をGFP標識するトランスジェニックマウスという二つの新しいシステムを開発し、それらを組み合わせて用いることにより、新生仔マウス大脳皮質第4層視床皮質結合リモデリングの二光子イメージング法を確立した。そのイメージングの結果、新生仔期において正常なバレル細胞の樹状突起はダイナミックに伸縮しながら、視床皮質軸索終末のある方向に向かって伸長していることが明らかになった。一方、NMDA型グルタミン酸受容体(NMDA受容体)機能が阻害されたバレル細胞では、樹状突起の伸縮の大きさが異常に増加し、樹状突起はランダムな方向に伸長していた。本研究の結果、新生仔期の視床皮質結合のリモデリング時に第4層細胞樹状突起がダイナミックに動いていること、またNMDA受容体は正確な視床皮質結合を形成するために、細胞自律的に樹状突起ダイナミクスを制御していることが示された。本年度は特に様々な追加実験を行い論文を完成させた。主な追加実験として、スライス電気生理学実験や、in vivoカルシウムイメージング実験によるNMDA受容体ノックアウトの効果検証などを行った。
2: おおむね順調に進展している
最重要課題である新生児大脳皮質における視床皮質結合精緻化の過程の二光子顕微鏡 in vivoイメージング実験の結果に関する論文発表を、追加実験への対応などを適切に行うことにより、達成することができた。他のいくつかの課題も順調に進展している。
最終年度であるので、残りのいくつかの課題についてはできる限り早く論文発表に結びつけたい。また、in vivoイメージングに関してはさらなる発展の基礎をしっかりと築きたい。そのための技術開発を続ける。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)
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