計画研究
哺乳類の脳は高度な情報処理能力を持つが、その基盤となるのは精緻に構築された神経回路である。神経回路は、動物の生後に環境から適切な刺激を受けることにより精緻なものへと成熟するが、そうしたリモデリングの機構の理解は不十分である。マウスの大脳皮質一次体性感覚野の第4層にみられる,頬におけるヒゲ(感覚毛)の配置に対応した「バレル」と呼ばれる特徴的な神経組織構造をモデルとして、研究を行っている。バレル形成の分子機構の理解は、1990年代後半のわれわれのグループを含む数グループによる遺伝学的手法の導入が緒となって進んできた。さらに、その後、われわれは条件的遺伝子ノックアウトを世界にさきがけて導入し、バレル形成を回路レベルで理解する途を拓いた。今年度の主な進展としては、バレル形成におけるアデニル酸シクラーゼ1(AC1)の作用機序の一端の解明がある。視床特異的に標的遺伝子をノックアウトするために、発達期の視床に発現するセロトニントランスポーター(5HTT)のプロモーターの制御下にCreを発現するBACトランスジェニックマウスを作製した。この5HTT-Creマウスと我々が以前に作製したAC1のfloxマウスを交配することにより、視床特異的AC1のノックアウトマウスを作製した。このマウスの体性感覚野のバレル構造を組織学的に解析したところ、顕著な異常が検出された。一方、われわれは以前Emx1Creマウスを用いて大脳皮質の興奮性経細胞でのみAC1をノックアウトしたが、そのマウスではバレルはほぼ正常に形成された。これらの結果を統合することにより、AC1がバレル形成においてプレ側の視床皮質軸索で重要な働きをしていることが示された。これらの結果により、バレル形成におけるcAMP経路の作用機序の一端が明らかになった。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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