計画研究
本課題は、視覚遮断による視床-皮質投射という特定の神経回路の経験依存的退縮機構に着目する。H26年度は「可塑性の時期と機能分子の関与」について進展があった。・H25年度までの眼優位可塑性の年齢依存性についての研究により、臨界期ピークの生後24日付近においては皮質ニューロンの機能変化が主たるものであり、視床からの入力軸索の刈り込みは臨界期の後期(生後40日付近)に発現することがわかった。そこで神経回路の変化がその後の回復過程に与える影響を調べるため、げっ歯類で眼優位性の回復作用が報告されている暗所飼育の効果を確認した。その結果、臨界期後期に片眼遮蔽を行った動物では、十分な両眼反応性の回復が見られなかった。すなわち臨界期後期の神経回路再編性は、臨界期に生じた機能変化を固定するものを考えられる。・シナプス伝達の逆行性調節因子として知られる内因性カンナビノイド系と眼優位可塑性の関わりを調べる目的で、マウス視覚野において内因性カンナビノイドの合成酵素の一つDiacylglycerol lipase(DGL)と受容体CB1の生後発達に伴う発現変化や、合成酵素阻害が眼優位可塑性に及ぼす影響を調べた。DGL-αとCB1の分布を免疫組織学的に調べると、それらは共に発達期視覚野に存在していた。DGL阻害薬の投与はマウスとネコ両方で眼優位可塑性を阻害した。またDGL-αノックアウト動物では眼優位可塑性が阻害されていたが、DGL-βノックアウト動物では阻害されていなかった。さらに臨界期に生じるそれぞれの眼への方位選択性の一致がDGL-αノックアウト動物では見られなかった。これらの結果は、DGL-αを含む内因性カンナビノイド系が視覚野の発達に必要であることを示唆する。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)
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