計画研究
大脳皮質視覚情報処理システムは、空間情報を取り扱う背側経路と形状情報を取り扱う腹側経路に分かれる。霊長類で知られたこの構造は、基本的にはマウスにも存在するはずである。しかし、マウスの腹側経路がどの程度発達しているのか、終着点の形状認知の責任部位はどこに存在するのか、詳しく判っていない。今年度はマウスにおける腹側経路の終着点、即ち形状認知の責任部位に関して知見を得た。我々はマウスの能力を評価するため、M字迷路法を開発した。これはM字型の迷路の上縁部分に液晶画面を設置し、そこに提示した画像情報に基づいて迷路を選択させる装置である。M字迷路を用いると、マウスは少なくとも20秒間は複雑な図形を記憶し、保持する能力があることが判った。それではマウスの形状認知の責任部位はどのように同定できるであろうか?複雑な図形を提示して視覚野を活動させると、図形に選択的な応答が出るだけでなく、明暗や図形を構成する線分に応ずる非選択的な応答も出現し、図形選択的応答と非選択的応答を区別することは困難である。しかし、複雑な図形と複雑な音を連想付け、音刺激によって図形を連想させた場合は、明暗や図形を構成する線分に対する非選択的な応答を起こすことなく、直接図形選択的な応答を起こすことができるはずである。そこで我々はまずマウスの連想記憶能力をテストした。複雑な図形と音を連想付けると、マウスは音から図形を連想し、連想した図形と同じものを選択する能力があることを、M字迷路法で確認した。さらにこのようなマウスの音に対する皮質応答が、聴覚野の背側(視覚野の腹側部)に出現した。この部分の応答を2光子イメージングで解析すると、図形に応ずるニューロンの他に、連想付けに用いた音に応ずるニューロンも記録された。この視覚野腹側部が、形状認知の責任部位である可能性がある。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Scientific Reports
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