研究概要 |
神経超解像法の開発 階層型ベイズ三次元再構成法を開発し、Dr.Kyonsoo Hong(NewYork University)からの提供によるアフリカツメガエル発達期神経回路構造に関する実体顕微鏡画像に適用した(Nishiyama,et al., 2011)階層型再構成法により、計算コストの高いベイズ法を小領域の画像パッチに適用することが可能になったが、画像パッチが顕微鏡のボケの大きさに比べると小さいため、ベイズ法の効果が明確にならないという問題点が生じた。より大きな画像パッチに対してベイズ法を適用可能にするため、数値計算法を見直す必要がある。また、共焦点・二光子顕微鏡に対しての三次元再構成法の適用を進めた。実体顕微鏡と異なりボケが小さいため計算コストは小さくなるものの、スキャンによって観測画像を得ているため、観測中に観測画像の各画素について位置ずれが起こりえる。その位置ズレを補正した上で各画素の情報を統合する三次元再構成法の開発を次年度以降において行う予定である。 神経システム同定法の開発 昨年度より、カルシウムイメージングによる多ニューロン活動記録からニューロン間の機能的結合を同定する統計手法の開発を継続実施している。まず、活動記録から関心領域およびスパイクを検出(Takahashi, et al.,2011)し、得られたスパイクデータに対しその機能的結合をボアソン自己回帰モデルと結合のスパース性を考慮した正則化法を用いて同定した(Aki,et al.,2012)。開発した本手法をマウス海馬からの培養回路における60個のニューロンのデータ(池谷研提供)に適用し、得られた結合とニューロンの空間的配置を比較することで本手法の妥当性を示した。イメージング対象の部分構造モデルの精度向上のために、画像パッチのテンソル因子化モデリングと、パッチ回転に関する自由度制限処理とを併用した手法を開発し、背景ノイズ除去性能の向上を示した(Kouno, et al.,2012)。また、神経細胞の成長円錐誘導時に膜電位を制御する分子システムを、膜電位計測記録データとベイズ的モデル選択基準の応用によって同定した。旧来のバイオインフォマティクス研究におけるシステム同定と比べた場合の本研究の特色は、多数の分子(6種)間反応ネットワークを推定するうえで、時間解像度の高い膜電位計痴を用いることで、ごく少数のノックアウト条件(2種+野生株)にもかかわらずモデル選択時の分離性能を得ることに成功している点にある。
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