研究概要 |
本研究は、多数のホスホリパーゼA_2分子群の生体内機能ならびにそれが制御する新しい脂質代謝ネットワークの解明を目指すものである。本年度は、(1)sPLA2-Xの新しい機能、ならびに(2)マスト細胞と微小環境による新しい脂質メディエーター産生調節機構について、以下の研究成果を得た。 (1)sPLA_2-Xと恒常性維持(J Biol Chem,286,11616-11631)(J Biol Chem,286,11632-11648,2011) (1)体毛形成:sPLA_2-Xは毛周期の増殖期に呼応して毛包外根鞘に発現し、体毛形成の制御に関わる。このため欠損マウスは体毛増殖に遅延が生じ、過剰発現マウスは完全に脱毛する。 (2)消化:sPLA_2-Xは消化管粘膜細胞から内腔に分泌され、食餌リン脂質の消化に関わる。欠損マウスでは脂質の消化吸収が減少するため、体脂肪蓄積の減少を示す。 (3)神経:sPLA_2-Xは末梢神経線維に分布し、神経突起伸長を促進する。このため欠損マウスでは末梢性疼痛応答が軽減し、逆に過剰発現マウスでは痛覚が増大する。 (2)マスト細胞と細胞内PLA_2(J Biol Chem,286,37249-37263,2011) マスト細胞にはcPLA_2αとiPLA_2βが発現しているが、このうち前者がマスト細胞のアラキドン酸遊離に必須であり、後者は関わらない。マスト細胞のcPLA_2αにより遊離されたアラキドン酸は局所環境の線維芽細胞に受け渡され、mPGES-1により抗アレルギー性のPGE_2に代謝される。
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