計画研究
(1) sPLA2-IIIは局所のPGD2を動員してマスト細胞成熟とアナフィラキシーを促進するAnaphylactic sPLA2であることを発表した(Nat Immunol. 2013)。更に新たに、マスト細胞成熟にはPGD2に加えてリゾリン脂質LPAが関わること、またsPLA2-III欠損によりマスト細胞に加えて好酸球と好塩基球にも異常が生じる一方で、接触性皮膚炎(Th1応答)、アトピー性皮膚炎(Th2応答)が増悪することを見出した。(2) sPLA2-VとsPLA2-IIEは肥満の脂肪細胞に発現誘導され、全身の代謝状態を制御するMetabolic sPLA2として機能することを発見し,最近論文採択された(Cell Metab. in press)。(3) 樹状細胞に分布するsPLA2-IIDはDHA由来の抗炎症性脂質メディエーターを動員して接触性皮膚炎を収束するResolving sPLA2であることを発表し(J Exp Med. 2013)、加えて本酵素が乾癬(Th17応答)や肥満(脂肪組織の慢性炎症)等の他の免疫応答も普遍的に抑制することを見出した。(4) sPLA2-XがGastrointestinal sPLA2として潰瘍性大腸炎の保護に関わることを新たに見出した。(5) sPLA2-IIFが表皮角化細胞に特異的に発現しているEpidermal sPLA2であることを見出し、その皮膚における病態生理における役割ならびに責任脂質代謝産物を解明した。これについては現在投稿準備中である。(6) 新規iPLA2であるPNPLA7はリゾホスファチジルコリンをグリセロホスホコリンに代謝するリゾホスホリパーゼとして機能することを見出した。欠損マウスはコリン欠乏症と酷似した脂肪肝・脂肪萎縮の表現型を示すことを明らかにし、現在投稿準備中である。
2: おおむね順調に進展している
多数のPLA2アイソザイムの欠損マウスの解析から、各酵素に特徴的な生理機能とその責任脂質代謝産物を捉えることに成功している。当該年度は、その成果の一部をNat Immunol(sPLA2-IIIとアナフィラキシー)、J Exp Med(sPLA2-IIDと免疫抑制)に発表し、プレス発表も行った。加えて、ごく最近Cell Metabに論文が採択された(sPLA2-V, IIEと肥満;次年度掲載)。これらの研究成果は、従来のsPLA2に関する概念を大きく変えるものであり、当該研究領域の進展に大きな影響を与えることは間違いないと確信している。論文発表以外にも多くの総説執筆と招聘講演があり、研究成果の公知という面からも十分な実績があったといえる。更に次の論文投稿に向けての準備を進めている段階である。総合して、研究は極めて順調に推移しており、今後も精力的な解析を継続していきたい。
最終年度は、これまでに見出してきたPLA2の機能に関する新知見のうち、未発表のものを論文として公開することを最優先の課題とする。すなわち、現在投稿準備中である(1) 皮膚の病態生理を制御するsPLA2-IIF、(2) 肝臓のコリン代謝を制御するPNPLA7、の完成を基本軸とし、これに加えて、当該年度中に見出した新しい知見(sPLA2-IIIによる好酸球・好塩基球・アレルギー性皮膚炎の制御、sPLA2-IIDの免疫抑制作用の普遍性、sPLA2-Xによる大腸炎の抑制など)について、責任脂質代謝産物の同定も含めて詳細に解析する。また、次への展開を見据えて、まだ未着手のPLA2アイソザイムの欠損マウスの作出を当該年度より進めており、これを樹立する。更に、マウスの表現型に該当するヒト疾患について、当該酵素の発現や脂質代謝産物の定量を行い、ヒトへの適用を模索する。以上を総合的に評価し、PLA2分子群による生命応答制御を体系化することを最終目標とする。
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