研究領域 | 翻訳後修飾によるシグナル伝達制御の分子基盤と疾患発症におけるその破綻 |
研究課題/領域番号 |
22117002
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
井上 純一郎 東京大学, 医科学研究所, 教授 (70176428)
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研究分担者 |
尾山 大明 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (30422398)
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キーワード | ユビキチン / シグナル伝達 / 構造生物学 / 数理モデル / 質量分析 |
研究概要 |
研究計画を遂行し以下の結果を得た。 1)TRAF6/MEKK3/TAK1シグナル複合体形成におけるTAK1のK63型ポリユビキチン化の役割を解明するための研究において既にMEKK3と結合する分子としてp62を同定しているが、p62がIL-1及びTNFaによるNF-kB活性化シグナルの制御に関与していることを見出した。 2)HTLV-I Tax依存的にIKK複合体から結合するタンパク質を新たに同定した。このタンパク質のノックダウンはTaxによるNF-kB活性化を抑制した。現在その分子機構を解析している。 3)癌細胞におけるNF-kB恒常的活性化の分子機構を解明するため脱ユビキチン化酵素A20に結合するタンパク質を質量分析により複数同定した。その中の一つがNF-kBの非古典的経路に関与していることを示唆する結果を得た。また、昨年度NF-kBによる癌悪性化に関与する遺伝子を同定し、そのタンパク質の発現が細胞の3D増殖を促進することを見出したが、それにb-cateninが関与していることを見出した。 4)Basal型乳癌細胞株においてNF-kBの活性化がCD44陽性,CD24陰性のがん幹細胞分画の顕著な増大を誘導することを既に明らかにしたが、その課程の細胞間相互作用にNotchシグナルが関与していることを明らかにした。 5)ユビキチン鎖に結合するタンパク質のユビキチン結合部位のペプチドを合成し、そのペプチドを共有結合させたアフィニティーカラムを作成した。NF-kBの活性化を誘導した後の細胞破壊液を調製し、作成したアフィニィティーカラムでユビキチン化タンパク質の精製を試みた。現在、結合タンパク質の溶出条件について検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
提唱した各々の計画について年度内にある程度の成果を得ている。特に翻訳後修飾に関わる新たなシグナル制御因子を同定しつつあることは高く評価したい。ただし、異分野連携によるシグナル伝達の数理モデル化では成果の具体化をしていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
現在の方向性を大きく変更する必要はない。ただし、異分連携については具体的な成果を目指す必要がある。 構造生物学との連携ついては既に成果が出ているが、数理科学との連携については、これまで蓄積してきたデータを論文化する。
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