研究領域 | 翻訳後修飾によるシグナル伝達制御の分子基盤と疾患発症におけるその破綻 |
研究課題/領域番号 |
22117004
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
山岡 昇司 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (90263160)
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研究分担者 |
斎藤 愛記 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助教 (00516312)
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キーワード | 翻訳後修飾 / NF-kappaB / 癌 / 細胞分化 |
研究概要 |
NF-kappaBは炎症、アポトーシス、腫瘍、分化など様々な生命現象に深くかかわることが知られている重要な転写因子であり、その制御機構の解明が慢性炎症性疾患や悪性腫瘍などの難治性疾患に対する有効な治療法開発に貢献することが期待されている。とりわけ悪性腫瘍細胞における持続的NF-kappaB活性化は癌細胞の生存、増殖、浸潤、転移、抗癌剤への耐性に関わることがこれまでの研究で示唆されており、その分子メカニズムの解明が新たな治療標的の同定につながることが期待されている。本研究では、NF-kappaBの活性化が代表的翻訳後修飾であるユビキチン化とリン酸化によって大きく制御されていることに注目し、数あるNF-kappaB制御因子の中から悪性腫瘍およびマクロファージ分化過程でおけるユビキチン修飾酵素A20とリン酸化酵素NF-kappaB inducing kinase(NIK)の役割について解析している。A20はNF-kappaBの定型的活性化経路を抑制することが知られているが、本研究により意外にもNIKによるNF-kappaB活性化を増強しそれがNIKの蛋白質レベルでの安定化によること、さらに内因性A20発現をノックダウンすることによってNF-kappaB依存性転写活性が低下することが判明した。さらに、A20発現抑制によって癌細胞の生存、増殖が著しく抑制され細胞死が誘導されることを見出しており、現在その分子機構を解明するべく解析中である。マクロファージへの分化モデル細胞は悪性腫瘍細胞と異なり持続的なNF-kappaB活性化を同一細胞株で経時的に誘導できるので、その分子メカニズムの解明に大きく貢献することが期待できる。現在、分化誘導に伴い持続的なNF-kappaB依存性転写活性化が起こること、A20複合体構成因子の発現が抑制されることを見出している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NIKについては、肺癌に続いて卵巣癌でも異常発現を見出し臨床検体での検証も進んでいる。A20については、癌細胞の生存と増殖に重要であるばかりでなく、NIKの安定化にも寄与していることが明らかになりつつある。当初予定したリン酸化、ユビキチン化制御の両面で研究が進捗している。細胞分化に伴う持続的NF-kappab活性化では、A20複合体構成因子の発現に変化が見られ、A20複合体としてのIKK抑制機能についての手掛かりを得ている。
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今後の研究の推進方策 |
NIKの腫瘍形成における役割を解明するためには、臨床検体の解析だけでなく動物腫瘍モデルでの検証が必要である。現在NIK条件付きKOマウスの作成が最終段階にあり、同系マウスの腫瘍モデルでに検証を行う予定である。A20の癌細胞の生存と増殖に対する作用、NIK安定化作用が脱ユビキチン化酵素活性に依存するのか、ユビキチン結合酵素活性に依存するのか、いずれにも依存しないのか、そのメカニズムを明らかにする必要がある。
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