研究領域 | 翻訳後修飾によるシグナル伝達制御の分子基盤と疾患発症におけるその破綻 |
研究課題/領域番号 |
22117005
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
高橋 雅英 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (40183446)
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研究分担者 |
榎本 篤 名古屋大学, 医学系研究科, 特任准教授 (20432255)
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キーワード | Girdin / Par-3 / 細胞運動 / 細胞極性 / Akt / ノックアウトマス |
研究概要 |
Girdinのノックアウトマウスでは脳室下帯で発生する神経前駆細胞が嗅球へ向かう移動が障害され、嗅球の形成異常が生じる。その移動経路であるrostralmigratorystreamにおける神経前駆細胞の形態を観察すると、必ずしも嗅球への方向性を示さず細胞極性に異常がみられる可能性が示唆された。そこで本年度は細胞の極性決定に重要な役割を果たすことが知られているPar-3とGirdinとの機能関連性について検討した。 HEK293細胞を用いて内在性Par-3とGirdinの結合を免疫沈降法で検討した結果、細胞内での両者の結合を確認した。両者の結合ドメインを決定するためPar-3およびGirdincDNAをフラグメントに分割し、pull-downアッセイにより解析した結果、Par-3のC末端領域およびGirdinのC末端領域が相互の結合に必要な領域であることが判明した。両者の結合能はAktによるGirdinのリン酸化に影響をうけなかった。Girdinの細胞極性における役割を明らかにするため、Girdinの発現をノックダウンした際の遊走細胞におけるゴルジ体の位置異常について検討した。通常ゴルジ体は運動する細胞の核の運動方向側に局在するが、GirdinあるいはPar-3をノックダウンすると50%以上の細胞にゴルジ体の位置異常が認められ、Girdinが細胞極性にも関与していることが示唆された。さらに細胞極性と関連する3次元培養によるMCF10A乳腺上皮細胞の管腔形成能におけるGirdinの役割を検討した。Girdinの発現をノックダウンするとPar-3をノックダウンした時と同様に、MCF10A細胞の管腔形成能が著しく低下し、シート状に細胞が増殖するようになった。以上より、GirdinはPar-3と相互作用することにより細胞極性の決定に重要な役割を果たしていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Girdinのがん細胞の浸潤・転移、血管新生、神経新生における機能とAktにおけるリン酸化修飾の意義についてそれぞれの解析系を用いて本研究はほぼ予定どおり進展している。本年度はGirdinの細胞極性における役割を解析する過程でPar-3との結合が重要であることを明らかにした。一方、AktによるGirdinのリン酸化修飾はPar-3との結合能に影響を与えず、極性決定には重要でない可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
現在、Girdinのリン酸化修飾についてAkt以外のキナーゼによるリン酸化部位の同定も進めており、それぞれのリン酸化抗体を作成することにより、その生物学的意義の解析を推進する予定でいる。現在まで明らかにしているAktによるリン酸化部位以外に機能的に重要なGirdinのリン酸化部位が同定できれば、その部位に変異を導入したノックインマウスを作成し、生体内での機能解析を進める。これらの研究によりGirdinのリン酸化修飾意義について多くの知見が得られるものと期待できる。
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