研究概要 |
細胞内シグナル伝達ネットワークは,蛋白質のさまざまな翻訳後修飾によって制御されている.そして近年の研究により,これら様々な翻訳後修飾は,癌,心血管疾患,神経変性疾患,自己免疫疾患から感染症に至るまでの,多くの病因・病態に関与していることが分かってきた.特に,これらのシグナル伝達ネットワークを理解するためには,その構築基盤となっている因子の相互作用を立体構造情報に基づいて解明することが必須である.本計画ではそのような分野の中から,特に重要であると考えられるターゲット,HTLV-Tax蛋白質,TRAF6,などのNF-kB経路,MAPK経路等に関わる因子の構造解析を,計画班間との共同研究により遂行する.また,当研究室で進行中のプロジェクト(転写制御因子HHM等)も推進する. 現在,HHMに関しては単独の構造解析が完了している.HHMは2つのヘリックスバンドルがV字型に配向した新規の構造を取ることが明らかになった.HLHモチーフを持つ領域は,このV字構造の内側に埋め込まれるように存在しており,従来解明されているDNA結合複合体のHLHモチーフとは全く異なった構造を取っていた.明らかになったHHM単独の構造はHHMと転写因子の非特異的な会合を防ぐ自己阻害状態であり,本来のターゲット転写因子が存在するときのみHLH領域が露出して,そのDNA転写活性を阻害するというモデルを提唱した.現在,仮説を検証するためのin vitro, vivoでの機能解析実験が進行中である.HTLV-Tax蛋白質に関しては,従来発現自体が困難であったが,真核細胞の系を用いて大量発現に成功し,さらに,NF-kB経路の因子であるNEMOと複合体を作ることを検証した.今後,他の因子も含め,複合体の構造解析を目指す.
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